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CRC/C/15/Add.231 2004年2月26日
条約44条に基づいて締約国によって提出された報告審査
子どもの権利委員会の最終所見:日本
1. 本委員会は日本政府第二回定期報告(CRC/C/104/Add.2)を、2004年1月28日に開催された第942回および943回会議(CRC/C/SR.942-943参照)において審査し、2004年1月30日に開催された第946回会議において以下の最終所見を採択した【註1】。
A. はじめに
2. 本委員会は、包括的な定期報告、および質問リスト(CRC/C/Q/JAP/2)に対する詳細な文書回答の提出を歓迎する。それらにより締約国における子どもの状況を明確に理解することができた。本委員会は、さらに、政府代表団がさまざまな領域から構成されていることを評価し、かつ、議論の最中に提起されたさまざまな提案および勧告に対する率直な意見交換および積極的な応答を歓迎する。
B. 積極的側面
3. 本委員会は以下のことを評価する。 a) 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護などに関する法律(1999年)および児童虐待の防止等に関する法律(2000年)の制定。 b) 2001年における子どもの商業的性的搾取に反対する国内行動計画の策定。 c) 2003年における青少年育成施策大綱の策定。
4. 本委員会は締約国が、絶対額において最大の政府開発援助(ODA)提供国であること、および、政府開発援助の相当部分が健康および教育を含む社会開発援助に割り当てられていることを評価する。
5. 本委員会は、締約国による就業の最低年齢に関するILO第138号条約の2000年における批准、および最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約の2001年における批准を歓迎する。
C. 主要な懸念事項および勧告 1. 一般的実施措置
(本条約第4条、第42条および第44条第6項)
本委員会による前回勧告 6. 本委員会は、締約国初回報告(CRC/C/41/Add.1)審査に基づいてなされた懸念および勧告(1998年6月24日、CRC/C/15/Add.90)のいくつかに対して立法的措置や施策が講じられたことに留意する。しかしながら、特に、差別の禁止(para. 35)、学校制度の過度に競争的な性格(para. 43)、および、いじめを含む学校における暴力に関する勧告(para.45)が、十分にフォローアップされていない。本委員会は、それらの懸念および勧告が本最終所見において再び強調されていることに留意する【註2】。
7. 本委員会は、締約国に、初回報告の最終所見における勧告のうち未だに実施されていないものに対応するため、および、第2回定期報告に対する本最終所見に含まれている懸念事項リストに対応するためにあらゆる努力を行なうことを強く要請する。
解釈宣言および留保 8. 本委員会は、第9条および第10条に対する解釈宣言ならびに第37条(c)に対する留保を懸念する。
9. 本委員会は、1993年世界人権会議のウィーン宣言および行動計画(A/CONF.157/23)に従い、本条約に対する解釈宣言および留保を締約国が撤回すべきことを繰り返し勧告する。
立法 10. 本委員会は、国内法が本条約の原則および規定を全面的に反映していないこと(例えば、本最終所見第22パラグラフ、第24パラグラフ、および第31パラグラフ参照)、ならびに、本条約が裁判所によって直接援用可能であるにもかかわらず、現実には援用されていないことを懸念する。
11. 本委員会は、締約国が、本条約の原則および規定、ならびに本条約の採用する権利を基礎に置くアプローチ(the rights-based approach)との適合性を確保するために、国内法の包括的な見直しを行ない、かつ、あらゆる適切な措置をとることを勧告する。
調整および国内行動計画 12. 本委員会は、子どもおよび若者に関する諸政策を調整する権限を有する青少年育成対策本部を内閣府に設置したこと、および、すでに指摘した青少年育成施策大綱を策定したことに留意する。しかしながら、本委員会は、青少年育成施策大綱が包括的な行動計画ではないこと、および、大綱の策定と実施に際して子どもおよび市民社会の参加が不十分であることを懸念する。
13. 本委員会は締約国に以下のことを勧告する。 a) 青少年育成施策大綱が権利を基礎に置くものであること、本条約のすべての領域を網羅すること、および、2002年国連子ども特別総会の最終文書である「子どもにふさわしい世界」における約束を考慮するものであることを確保するために、青少年育成施策大綱を、市民社会および子ども組織と共同して、強化すること。 b) 新しい課題および問題への青少年育成施策大綱による効果的な対応を確保することを目的として、青少年育成施策大綱を、市民社会および子どもとともに、継続的に見直すこと。
独立した実施監視 14. 本委員会は、本条約の実施を監視するための独立した全国的な仕組み(system)がなんら存在していないことを懸念する。同時に、本委員会は、三つの県(prefectures)において地域オンブズマンが設立されたとの情報および、次期国会に人権委員会の設立に関する法案が提出されるとの情報を歓迎する。法案は法務大臣に対して責任を有する人権委員会を予定しているとの政府代表からの情報に照らし、本委員会は当該機関の独立性を懸念する。さらに、本委員会は、人権委員会が本条約の実施を監視する権限を明示的に与えられていないことを懸念する。
15. 国内人権機構に関する一般的意見第2号に照らし、本委員会は、締約国に以下のことを勧告する。 a) パリ原則(General Assembly resolution 48/134)に従い、計画されている人権委員会が、独立し、かつ効果的な機構であることを確保するために、人権擁護法案を見直すこと。 b)
人権委員会が本条約の実施を監視するための明確に規定された権限を有すること、子どもにきめ細やかに配慮し(child sensitive)、かつ迅速な方法で子どもからの苦情不服を 取扱うこと、および、本条約における権利の侵害に対して救済を提供することを確保すること。 c) 県における地域オンブズマンの設立を促進すること、および、人権委員会が設置された場合には地域オンブズマンが人権委員会と連携するための仕組み(system)を設立すること。 d)
人権委員会および地域レベルにおけるオンブズマンが適切な人的および財政的資源を提供されること、ならびに、それらに子どもが簡単にアクセスできることを確保すること。
データ収集 16. 本委員会は、本条約のすべての領域に関して、0歳から18歳までのすべての子どもに関する包括的なデータが欠如していることを懸念し、本委員会は、また、0歳から18歳までの子どもに割り当てられている資源に関する情報が欠如していることを遺憾に思う。
17. 本委員会は、本条約のすべての領域に関するデータの収集、および、データの18歳未満のすべての者の年齢ごとの分類、特に、性別、民族的少数者、先住民族ごとの分類を確保することを目的として、締約国がデータ収集のための既存の機構を強化すること、および、必要な場合にはデータ収集のための機構を増設することを勧告する。
本委員会は、また、締約国が、公的部門、私的部門、およびNGO部門に対する財政支出のインパクトおよび効果、ならびに、異なる部門において提供される子どものためのサービスのコスト、利用可能性、およびその質と効率性を評価することを目的として、子どもに対する予算配分に関するデータを収集し、かつ、0歳から18歳までの子どものために公的部門、私的部門、NGO部門に支出された政府予算の金額と割合を明確にすることを勧告する。
市民社会との連携 18. 市民社会との連携を促進させる傾向が強まっているとの政府代表によって提供された情報に留意するものの、本委員会は、特に子どもの権利の領域において、政府とNGOとの間の相互交流が欠如していることを懸念する。
19. 本委員会は、締約国が本条約および本委員会の最終所見の実施に当たって市民社会と計画的かつ体系的に(systematically)連携することを勧告する。
広報と研修 20. 本委員会は、締約国による裁判官、教師、警察官、矯正施設職員、保護観察官および入国管理職員に対する研修活動を歓迎する。しかしながら、子ども、公衆一般、および子どもとともにまた子どものために働いている多くの専門家が、本条約および本条約採用する権利を基礎に置くアプローチを十分に認識していないことに依然として留意する。
21. 本委員会は締約国に以下のことを勧告する。 a) 本条約、特に子どもが権利の主体であるという事実に対する公衆一般および子どもの認識を高めるためのキャンペーンを強化すること。 b) 子どもとともにまた子どものために働いているすべての者、とくに、教師、裁判官、法律家、国会議員、法執行職員、公務員、地方自治体職員、施設職員、子ども収容施設職員、ならびに、心理学者を含む保健職員およびソーシャル・ワーカーに対して、条約の原則および規定に関する計画的かつ体系的な(systematic)教育および研修を継続して実施すること。 c) 認識向上キャンペーン、研修および教育的プログラムが、態度の変化、行動、および子どもの取扱いに対してどのようなインパクトを与えたかを評価すること。 d)
人権教育、特に、子どもの権利に関する教育を学校の教育課程に導入すること。
2. 子どもの定義
(本条約第1条)
22. 本委員会は、婚姻最低年齢が男子(18歳)と女子(16歳)で依然として異なること、および、性的同意最低年齢(13歳)が低いことを懸念する。
23. 本委員会は締約国に以下のことを勧告する。 a) 女子の婚姻最低年齢を男子のそれに引き上げること。 b) 性的同意最低年齢を引き上げること。
3. 一般原則
(本条約第2条、第3条、第6条および第12条)
差別の禁止 24. 本委員会は、婚外子が法律によって差別されていること、ならびに、女の子、障害を持つ子ども、アメラジアンの子ども、韓国・朝鮮人の子ども、部落の子ども、アイヌの子ども、その他の少数者グループ、および移住労働者の子どもに対する社会的差別が根強く存在していることを懸念する。
25. 本委員会は、締約国が、婚外子に対するあらゆる差別、特に、相続、国籍に関する権利(the citizenship right)および出生登録に関する差別を廃絶すること、ならびに、法律および規則から「非嫡出」(illegitimate)という差別的用語を廃止することを目的として、国内法を改正することを勧告する。本委員会は締約国が、特に、女の子、障害を持つ子ども、アメラジアン、韓国・朝鮮人、部落、アイヌ、その他の少数者、移住労働者の子ども、難民の子ども、および難民申請をしている子どものために、社会的差別と闘い、かつ、基礎的なサービスへのアクセスを確保するために必要とされるすべての予防的な措置を、特に公衆に対する教育および認識向上キャンペーンを通して、実施することを勧告する。
26. 本委員会は、次回の定期報告において、2001年人種主義、人種差別、排外主義、および関連する非寛容に反対する国際会議において採択された宣言および行動計画をフォローアップするために、本条約第29条1項に関する一般的意見第1号(教育の目的)を考慮に入れて締約国によって取られた子どもの権利条約に関連する措置とプログラムに関する具体的な情報が提供されることを要請する。
子どもの意見の尊重 27. 子どもの意見の尊重を促進するための締約国による努力に留意するものの、本委員会は、社会における子どもに対するこれまでの(traditional)姿勢が、家庭、学校、その他の施設および社会全般において、子どもの意見の尊重を制限していることを依然として懸念する。
28. 本委員会は、締約国に対して、本条約第12条に従い、以下のことを勧告する。 a) 家庭、裁判所、行政機関、施設、学校において、また政策の制定および運用に際して(policy development)、子どもに影響を与えるすべての事柄について、子どもの意見の尊重および子どもの参加を促進し、かつ、助長すること、ならびに、子どもがこの権利を確実に認識できるようにすること。 b)
子どもの自己の意見を考慮される権利および子どもの参加する権利に関する教育的な情報を、特に、親、教育者、政府の行政官、裁判官、および社会全体に提供すること。 c) 子どもの意見が考慮される程度を定期的に見直し、かつ、子どもの意見の考慮が政策およびプログラム、さらには、子ども自身に対して与えたインパクトを定期的に見直すこと。 d) 教育、余暇、およびその他の活動を子どもに提供している学校その他の施設において、方針(policies)を決定するための会議(boards)、委員会(committees)その他の会合に、子どもが全面的に(systematically)参加することを確保すること【註3】。
4. 市民的権利および自由
(本条約第7条、第8条、第13条ないし第17条、および第37条(a))
表現の自由および結社の自由 29. 本委員会は、学校に通う子ども(school children)による学校内外における政治的活動に加えられている制限を懸念する。本委員会は、また、18歳未満の子どもが組織に加入する場合に親の同意が求められることを懸念する。
30. 本委員会は、締約国が、本条約第13条、第14条および第15条の全面的な実施の確保を目的として、学校に通う子どもの学校内外における活動を規制する法律および規則、ならびに、組織に加入するに当たって親の同意を求めていることを見直すことを勧告する【註4】。
名前および国籍 31. 本委員会は、日本人の父親と外国人の母親の子どもが、その出生前に父親が認知しなければ、日本国籍を取得できず、その結果、無国籍となっていることを懸念する。本委員会は、さらに、登録されていない移民が子どもの出生を登録することができないこと、および、その結果無国籍となっていることを懸念する。
32. 本委員会は、締約国が、日本において出生したいかなる子どもも無国籍となることがないよう、本条約第7条との適合性を確保するために、国籍法ならびに関連するすべての法律および規則を改正することを勧告する。
プライバシーに関する権利 33. 本委員会は、特に、子どもの所持品検査に関して子どものプライバシーに関する権利が全面的に尊重されていないこと、および施設における職員が子どもの個人的な通信に干渉できるという事実を懸念する。
34. 本委員会は締約国に以下のことを勧告する。 a) 個人的な通信および所持品検査を含めて、子どものプライバシーに関する権利の全面的な実施を確保すること。 b) 本条約第16条との適合性を確保するために児童養護施設最低基準を改正すること。
体罰 35. 本委員会は、学校において法禁されているにもかかわらず、体罰が学校、施設および家族において広く用いられていることに懸念する。
36. 本委員会は締約国に以下のことを勧告する。 a) 施設および家庭における体罰を禁止すること。 b) 体罰に関する態度を変化させ、かつ、学校、施設および家庭において体罰に代わる積極的かつ非暴力的な形態のしつけ(discipline)を促進することを目的として、子どもの不当な取扱いがもたらす否定的な影響に関する教育的キャンペーンを公衆に対して実施すること。 c) 不当な取扱に関する苦情不服申立を効果的かつ子どもにきめ細やかに配慮した(child
sensitive)方法で取扱うことを確保するために、施設および学校における子どものための苦情不服申立の仕組みを強化すること。
5. 家庭的環境および代替的養護
(本条約第5条、第18条第1項・第2項、第9条ないし第11条、第19条ないし第21条、第25法、第27条第4項および第39条)
子どもの虐待および遺棄 37. 本委員会は、子どもの虐待の報告および調査を促進するために取られた措置を歓迎する。それらは相当な成果をもたらしている。しかしながら、本委員会は以下のことを懸念する。 a) 子どもの虐待を予防するための包括的かつ学際的な戦略がなんら存在していないこと。 b) 訴追された事件数が依然として極めて少ないこと。 c) 被害児童に対する回復およびカウンセリングのサービスが不十分であり、増加している要求に応えられていないこと。
38. 本委員会は締約国に以下のことを勧告する。 a) 子どもの虐待を防止するための学際的な国内戦略を、特に市民社会、ソーシャル・ワーカー、親および子どもと共同して、開発すること。 b) 家庭において虐待の被害を受けた子どもに対する保護的措置を促進するために法律を見直すこと。 c)
児童相談所において被害児童に対する心理的カウンセリングおよび学際的な方法によるその他の回復サービスを提供することのできる訓練された専門家の数を増加させること。 d) 法執行職員、ソーシャル・ワーカー、児童相談所職員および検察官に対して、どのようにしたら子どもにきめ細やかに配慮した(child-sensitive)方法で、虐待の申立の受理、監視、調査および訴追を行えるかに関する研修を増やすこと。
養子縁組 39. 本委員会は、国内養子縁組および国際養子縁組の監視および規制が十分でないこと、ならびに、国内養子縁組および国際養子縁組に関して利用可能なデータが極めて限られていることを懸念する。
40. 本委員会は締約国に以下のことを勧告する。 a) 国内および国際養子縁組を監視するための仕組み(system)を強化すること。 b) 国際養子縁組に関する子どもの保護及び国際協力に関するハーグ条約第33号(1993年)を批准し、実施すること。
子どもの奪取 41. 本委員会は子どもを奪取から保護するための保護手段(safeguards)が不十分であることを懸念する。
42. 本委員会は、締約国が国際的な子どもの奪取の民事的側面に関するハーグ条約第28号(1980年)を批准し、実施することを勧告する。
6. 基礎的保健および福祉
(本条約第6条、第18条第3項、第23条、第24条、第26条、および、第27条第1項ないし第3項)
障害を持つ子ども 43. 本委員会は精神的障害を含む障害を持つ子どもが本条約によって保障された権利の享受に当たって不利な立場に置かれていること、ならびに、教育制度およびその他の余暇または文化的活動に全面的に統合されていないことを懸念する。
44. 本委員会の1997年における障害を持つ子どもに関する一般的討議(CRC/C/66, Annex V)、および、障害者のための機会の均等化に関する国連基準規則(GA Resolution 48/96 of 20 December 1993)を考慮し、本委員会は、締約国に以下のことを勧告する。 a)
障害を持つ子どもに影響を与えるすべての施策が、障害を持つ子どものニーズを満たし、かつ、本条約および障害者のための機会の均等化に関する規準規則に従うことを確保するために、障害を持つ子どもに影響を与えるすべての施策を、障害を持つ子どもおよび関連する非政府組織と共同して、見直すこと。 b) 教育、余暇、および文化的活動における障害を持つ子どものより一層の統合を促進すること。 c) 障害を持つ子どものための特別な教育およびサービスに割当てられる人的および財政的資源を増加させること。
思春期の子どもの健康 45. 本委員会は、ストレスおよび欝を含む精神的および感情的ゆがみ(disorders)が思春期の子どもの間に広がっていること、ならびに、思春期の子どもの精神的健康に関する包括的な戦略が欠けていることを懸念する。本委員会は、また、若者の間に性感染症が増加していることを懸念し、締約国における思春期の子どもによる薬物乱用に対する締約国の懸念を共有する。本委員会は、また、18歳未満の子どもが医療的措置およびカウンセリングを受けるために親の同意を必要とすることを懸念する。
46. 本委員会は締約国に以下のことを勧告する。 a) 思春期の子どもの健康に関する包括的な政策を開発するために、思春期の子どもの健康に関する調査を実施すること。この包括的な政策が、適切な場合には予防的措置を含むこと、ならびに、精神的健康、リプロダクティブ・ヘルス、性的健康、薬物乱用、およびその他の関連する問題に対応するものであること。 b) 18歳未満の子どもが親の同意なくして医療的カウンセリングおよび情報にアクセスできるようにすることを目的として法律を改正すること(註1参照)。
c) 思春期の子どもの間の精神的および感情的なゆがみを予防するためのプログラムを開発し、実施すること、ならびに、教師、ソーシャル・ワーカー、および子どもとともに働くその他の者に対して、どのようにしたら子どもにきめ細やかに配慮した(child sensitive)方法で思春期の子どもの精神的健康問題に対応できるかについての研修を行なうこと。
若者の自殺 47. 本委員会は以下のことを強く懸念する。 a) 若者の自殺率が高く、増加していること。 b) 自殺および自殺未遂ならびにその原因に関する質的および量的なデータが欠如していること。 c) 警察が若者の自殺を取扱う主要な組織の一つとされているという事実。
48. 本委員会は締約国に、児童相談所、ソーシャル・ワーカー、教師、保健職員およびその他の関係する専門家と連携して、若者の自殺およびその原因に関する徹底的な調査を行なうこと、ならびに、若者の自殺に関する国内計画の開発と実施のためにこの情報を用いることを勧告する。
7. 教育、余暇および文化的活動
(本条約第28条、第29条および第31条)
49. 本委員会は、締約国による教育制度改革のための努力および、教育制度を本条約によりよく適合させるための努力に留意するが、それにもかかわらず、本委員会は以下のことを懸念する。 a) 教育制度の過度に競争的な性格が子どもの肉体的および精神的な健康に否定的な影響を及ぼし、かつ、子どもが最大限可能なまでに発達することを妨げていること。 b) 高等教育への進学が過度に競争的であるため、公立学校の教育が、貧しい家庭の子どもには手の届かない私的な家庭教師や塾の学習によって、補われなければならいこと。 c)
学校における子どもの問題および紛争に関して、親と教師との間のコミュニケーションおよび協働が極めて限定されていること。 d) 日本にある外国人学校の卒業生の大学入学資格に関する基準が拡大されたものの、高等教育へのアクセスが依然として否定されている者がいること。 e) 定時制高校が、特に学校から脱落した(dropout)子どもに対して、柔軟な教育機会を提供しているにもかかわらず、東京都においてそれが閉校されようとしていること。 f) 少数者の子どもが自らの母語による教育を受ける機会が極めて限定されていること。 g)
審査手続があるにもかかわらず、不完全または一方的な歴史教科書があること。
50. 本委員会は締約国に以下のことを勧告する。 a) 高校を卒業したすべての者が高等教育に平等にアクセスすることを確保するために、教育の高い質を維持しながら学校制度の競争主義的な性格を抑制することを目的として、生徒、親、および関連する非政府組織の意見を考慮に入れながら、カリキュラムを見直すこと【註5】。 b) 学校における問題および紛争、特に、いじめを含む学校における暴力に効果的に対応するための措置を、生徒および親と共同して、開発すること。 c)
定時制高校の閉校を再考し、従来の(競争主義的なそれ)とは異なる形態の教育(alternative forms of education)を拡大するよう東京都の関係当局に働きかけること。 d) 少数グループの子どもが自己の文化を享受し、自己の宗教を表明または実践し、かつ、自己の言語を用いる機会を拡大すること。 e) 教科書がバランスの取れた見方を提供することを確保するために審査手続のあり方を厳しく見直すこと【註6】。
8. 特別保護措置
(本条約第22条、第37条(b)ないし(d)および第32条ないし第36条、第38条、第39条、第40条)
性的搾取および売買 51. 第3パラグラフに述べられているように、本委員会は児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護などに関する法律(1999年)を歓迎する。しかしながら本委員会は以下のことを懸念する。 a) 刑法が、強姦を男性による女性に対する行為として狭く定義していること。 b) 性的搾取の被害者となったすべての子どもが適切な回復および支援サービスにアクセスできているわけではないこと。 c)
被害児童が犯罪者として取扱われているという報告があること。 d)「援助交際」または報酬付のデートに関する報告があること。 e) 性的同意最低年齢の低さが「援助交際」に寄与し、子どもの性的虐待に対する刑事訴追を妨げていること。
52. 本委員会は締約国に以下のことを勧告する。 a) 男の子および女の子に対する平等な保護を確保するために性的搾取および虐待に関する法律を改正すること。 b) 児童相談所において被害児童に対する心理的カウンセリングその他の回復サービスを提供することのできる訓練された専門家の数を増加させること。 c)
法執行職員、ソーシャル・ワーカー、児童相談所職員および検察官に対して、どのようにしたら子どもにきめ細やかに配慮した(child-sensitive)方法で、虐待の申立の受理、監視、調査および訴追を行えるかに関する研修を行うこと。 d) 子どもの性的虐待および搾取に関する法規についての資料集の作成頒布、あるいは健康的なライフスタイルに関する教育的プログラムの開発(学校におけるプログラムを含む)といったような、性的サービスを勧誘し、提供する者を対象にした予防的措置を開発すること。 e) 性的同意年齢を引き上げること。
少年司法 53. 本委員会による初回報告審査の後、締約国が少年司法改革を行なったことに留意するものの、本委員会は、改革の多く、特に、刑事裁判所への移送最低年齢が16歳から14歳に引き下げられたこと【註7】、および、審判前の身柄拘束が4週間から8週間に延長されたことが、条約の原則および規定ならびに少年司法に関する国際準則の精神に則ってないことを懸念する。大人と同様に刑事裁判にかけられ、自由刑(detention)を科せられる子どもの数が増加していること、および、少年が終身刑を科せられうることを懸念する。最後に、本委員会は、いかがわしい場所を徘徊するといった問題行動を示す子どもが非行少年として取り扱われる傾向にあるとの報告を懸念する。
54. 本委員会は締約国に以下のことを勧告する。 a) 少年司法に関する基準、特に、本条約第37条、第39条および第40条、少年司法運営に関する国連最低基準規則(北京ルール)および少年非行防止に関する国連ガイドライン(リヤド・ガイドライン)ならびに、本委員会による1995年における少年司法運営に関する一般的討議の全面的な実施を確保すること。 b) 非行少年に対する終身刑を廃止するために法律を改正すること【註8】。 c)
自由の剥奪は最終手段としてのみ用いられることを確保するために、審判前の身柄拘束を含めて、拘禁に代わる措置を強化し、かつ、その利用を増やすこと。 d) 家庭裁判所が16歳以上の子どもに関する事件を成人の刑事裁判所に送致する実務を廃止 するために、現行法の逆送の可能性を見直すこと【註9】。 e) 法に抵触した子どもに、法的手続の全過程を通して法的援助を提供すること。 f) 問題行動を起こした子どもが非行少年として取り扱われないように保障すること【註10】。 g)
リハビリテーションおよび再統合のためのプログラムを強化すること。
9. 子どもの権利に関する条約の選択議定書
55. 本委員会は、締約国が、子どもの売買、子ども買春および子どもポルノ、ならびに、子どもの武力紛争への関与に関する本条約の選択議定書をまだ批准していないことに留意する。
56. 本委員会は締約国が子どもの売買、子ども買春および子どもポルノ、ならびに、子どもの武力紛争への関与に関する本条約の選択議定書を批准することを勧告する。
10. 広報
57. 最後に、本条約第44条第6項に照らし、本委員会は、締約国によって提出された第2回定期報告および文書回答が公衆全体に対して広く利用可能なものとされること、および、関連する審議要録および本委員会によって採択された最終所見を含む報告書の出版が検討されることを勧告する。これらの文書は、政府、議会、非政府組織を含む公衆一般における本条約およびその実施と監視に関する議論と認識を喚起することを目的として、広く配布されるべきである。
11. 次回報告
58. 本委員会は締約国から第3回報告を提出期限の2006年5月21日までに受領することを期待する。第3回報告は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。
(福田雅章・世取山洋介訳:2004年3月30日現在)
訳 註
【註1】ここに仮訳したものは、国連「子どもの権利委員会」から公表された日本政府に対する第2回最終所見である。今回の最終所見には、委員会がわが国の実情を誤解していると思われる箇所が散見される。これによって最終所見の権威がいささかでも低下するものでないことは言うまでもない。最終所見が締約国における具体的・個別的な権利侵害を取り上げる実務型になっているため、このような誤解が多く生じたと思われる。委員会に対しては未編集版の段階でそれらの訂正を申し出ていたが、訂正されなかったため、本仮訳に最小限度の註を付すことにした。3月8日に日弁連で行われた李委員(今回の報告審査の日本担当官)との質疑応答で明らかになった内容も部分的に加味してある。
【註2】 本パラグラフにおいて言及されている初回報告に対する最終所見における懸念と勧告の具体的な内容は以下の通りである。 ○<差別の禁止> 「13.委員会は、差別の禁止(第2条)、児童の最善の利益(第3条)及び児童の意見の尊重(第12条)の一般原則が、とりわけアイヌの人々及び韓国・朝鮮人のような国民的、種族的少数者に属する児童、障害児、施設内の又は自由を奪われた児童及び嫡出でない子のように、特に弱者の範疇に属する児童の関連において、児童に関する立法政策及びプログラムに十分に取り入れられていないことを懸念する。委員会は、韓国・朝鮮出身の児童の高等教育施設への不平等なアクセス、及び、児童一般が、社会の全ての部分、特に学校制度において、参加する権利(第12条)を行使する際に経験する困難について特に懸念する。」 「14.委員会は、法律が、条約により規定された全ての理由に基づく差別、特に出生、言語及び障害に関する差別から児童を保護していないことを懸念する。委員会は、嫡出でない子の相続権が嫡出子の相続権の半分となることを規定している民法第900条第4項のように、差別を明示的に許容している法律条項、及び、公的文書における嫡出でない出生の記載について特に懸念する。委員会は、また、男児(18歳)とは異なる女児の婚姻最低年齢(16歳)を規定している民法の条項を懸念する。」 「35.委員会は、条約の一般原則、特に差別の禁止(第2条)、児童の最善の利益(第3条)及び児童の意見の尊重(第12条)の一般原則が、単に政策の議論及び意思決定の指針となるのみでなく、児童に影響を与えるいかなる法改正、司法的・行政的決定においてもまた、全ての事業及びプログラムの発展及び実施においても、適切に反映されることを確保するために一層の努力が払われなければならないとの見解である。特に、嫡出でない子に対して存在する差別を是正するために立法措置が導入されるべきである。委員会は、また、韓国・朝鮮及びアイヌの児童を含む少数者の児童の差別的取扱いが、何時、何処で起ころうと、十分に調査され排除されるように勧告する。更に、委員会は、男児及び女児の婚姻最低年齢を同一にするよう勧告する。」 ○<教育制度の競争主義的性格> 「22.非常に高い識字率により示されているように締約国により教育に重要性が付与されていることに留意しつつも、委員会は、児童が、高度に競争的な教育制度のストレス及びその結果として余暇、運動、休息の時間が欠如していることにより、発達障害にさらされていることについて、条約の原則及び規定、特に第3条、第6条、第12条、第29条及び第31条に照らし懸念する。委員会は、更に、登校拒否の事例がかなりの数にのぼることを懸念する。」 「43.締約国における高度に競争的な教育制度並びにそれが児童の身体的及び精神的健康に与える否定的な影響に鑑み、委員会は、締約国が、条約第3条、第6条、第12条、第29条及び第31条に照らし、過度なストレス及び登校拒否を予防し、これと闘うために適切な措置をとることを勧告する。」 ○<学校における暴力> 「24.委員会は、学校における暴力の頻度及び程度、特に体罰が幅広く行われていること及び生徒の間のいじめの事例が多数存在することを懸念する。体罰を禁止する法律及びいじめの被害者のためのホットラインなどの措置が存在するものの、委員会は、現行の措置が学校での暴力を防止するためには不十分であることを懸念をもって留意する。」 「45.特に条約第3条、第19条及び第28条2に照らし、委員会は、とりわけ体罰及びいじめを除去する目的で、学校における暴力を防止するために包括的なプログラムが考案され、その実施が綿密に監視されるよう勧告する。加えて、委員会は、体罰が家庭及び児童養護その他の施設において法律によって禁止されるよう勧告する。委員会は、また、代替的な形態の懲戒が、児童の人間としての尊厳に合致し条約に適合する方法で行われることを確保するため、啓発キャンペーンが行われるよう勧告する。」 (以上すべて外務省訳)
【註3】"systematically"を単に「制度的に」と訳したのでは、誤解を招くため、本文のように仮訳した。「自己決定権」や「表現の自由」とは異なる意見表明(=参加)権がなぜ子どもに保障されなければならないかという本質への考慮を欠いた、単なる形式的・制度的な保障は子どもの成長発達に百害あって一利ない。自らの成長発達プロセスへの継続的・全面的な参加の保障という中にこそ本質がある。
【註4】わが国においては、「親の同意」は、原則として財産に関する法律行為にとどまっており(民法4条参照)、組織への加入に際して親の同意を求める規制は存在しない。政府答弁も会費等の経費負担との関係で親の取り消し権を述べたに過ぎない。同様の問題は、懸念45および勧告46(b)との関連でも生じる。もっとも懸念45には医的侵襲を伴う治療が含まれており、親の同意が正面から問題になりうる場合があるが、勧告46はカウンセリングと情報へのアクセスだけに限定しおり、組織への加入の場合と同様である。これらの場合に「経費の公的負担制度を設けよ」ということを求めているのか、勧告の趣旨が不明である。
【註5】本勧告の中に、「教師」が抜け落ちている。しかし、教育は、本来、成長発達主体である子どもと、それを支援し寄り添う者との間に成立する主観的な営みであり、そうであれば、親と並んで教師も当然含まれていると解すべきである。このことは懸念49(c)の記述および勧告28の趣旨等からしても自明である。この点について、李委員は、教師が含まれるのは、時として対立関係に立つ管理職は別として、当然のことであり、「『教師』を明記しなかったのは、委員会の過誤(ミステイク)である」と解答している。
【註6】原文は"strengthen review system for textbooks"となっているが、本勧告を「既存の教科書検定制度を強化せよ」という趣旨で読むのは妥当ではない。懸念49(g)および審査の過程に鑑みるとき、政府の恣意的な検定制度のあり方と運用の見直しを勧告したのであり、本仮訳はその意をくんで訳した。
【註7】原文では、"the minimum age of criminal responsibility"「最低刑事責任年齢」となっているが、それは刑法で定められており、少年法の改正によって変更されたわけではない。したがって、本仮訳では「刑事裁判所への移送最低年齢」と訳した。
【註8】本勧告は、仮釈放を認めない絶対終身刑の廃止を要請していると思われるが、わが国にはそのような「終身刑」は存在しない。李委員は、報告審査当日における通訳の誤りであるとされているが、「無期刑」の廃止を求めたものと解釈することも妥当でない。本勧告は削除されるべきである。
【註9】懸念53の指摘と併せて読むとき、「16歳以上」というのは、「14歳以上」の誤りであると思われる。少年法改正によって導入された、故意の犯罪行為で被害者を死亡させた場合における16歳以上の少年に対する原則的な刑事裁判所への移送(少年法20条2項)を対象にしたとも解せるが、「14歳以上」の誤りであると解すれば、これも含まれることになる。
【註10】ここに「問題行動を起こした少年」とは、懸念53の指摘と併せて読むとき、いわゆる単なる「不良少年」を意味する。したがって勧告では「犯罪者(criminals)」となっているが、本訳では「非行少年」とした。
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