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東京都調布市学力テストの問題性
 
竹内常一(國學院大學名誉教授・調布市教育を考える市民会議)
 
調布の学力テスト事件の経緯
 
2007年1月16日、調布市教委は、昨年度につづいて小学4年・6年には国語・算数の、中学1年には国語・数学・英語の学力テストと学習意識調査を実施した。ところが、試験日の4日前、そのテスト問題が昨年度と同じであることが判明した。ある小学校で教員が校長保管の昨年度のテスト問題をコピーし、テストの練習を行っていたからである。その小学校からの通報で、市教委ははじめてテスト問題が同じであることを知り、その小学校の6年生のテストだけ延期し、他については計画どおりテストと意識調査を実施した。
 
調布市とベネッセコーポレーションの契約
 
 調布市とベネッセコーポレーションとの間で交わされた契約書によると、調布市は学力テストならびに調布市オリジナルの学習意識調査をベネッセに全面的に委託している。「全面的に」というのは、学力テストの問題の作成・印刷、学習意識調査の設問の作成、問題冊子の配送・回収、採点・集計・分析、結果報告書の作成と配布、児童生徒個別の結果表の作成・配布をすべて含んでいるからである。まさに「丸投げ」である。しかも、契約書によると、ベネッセ側は「問題もすべて回収する」となっている。ちなみに、その委託費は、昨年度438万1713円、今年度442万2000円となっている。
 
調布市教委の対応
 
 この事件は朝日、読売、毎日、東京新聞にスクープされ、1月24日または25日に報道された。そのなかで明らかにされたことは、@市教委は当日になるまで問題が同じであることを知らなかった、A問題用紙の1部を校長保管とし、それをコピーすることも内容を口外することも禁止するという通知を一度だけ出していた。B「市教委指導室は・・『(試験が)同じ問題であることにより、複数年の比較がより適切にできる』としている」(毎日)。Cテストの結果は学校名を伏せ、各校の平均点を一覧にして、校長に配る。校長には自校の結果を保護者に報告し、改善策を説明するように指導しているなどであった。
 
市民(教育ネット)からの質問
 
 新聞報道によって事実を知った市民の「教育ネット」は市教委の指導室長に面談を求めた。そのなかで問題にされたことは、@昨年度も今年度もテスト問題が子どもにも、教師にも返されていないのはどういうわけか、Aテスト問題が公表されなければ、子どもも親も、また教師も学校も、テストの結果を自己評価し、改善策を考えることができないではないか、Bテスト問題が同じであったことについてどう思うか、Cなぜ一教師がテスト問題をコピーして配布したことが処分対象行為となるのか、D学力テストの委託費が昨年度が431万円、同じ問題の今年度が442万円となっているのはなぜかなどであった。
 
市教委の回答
 
 これにたいする指導室長から回答は、@「業者テスト」の場合は、著作権のうえから問題を公開せず、問題用紙は子ども・親、教師・学校に渡さないことになっている、A業者によって分析されたテスト結果だけが返ってくるが、テスト問題は返されない、B市教委が「業者テスト」をするのは、子どもの不得意な分野を明らかにし、それをなくしていくためである、C業者により分析された結果は「参考にする」ものであり、一人ひとりの子どもの実態を知っている教師・学校の分析の方が重要である、Dこれらの分析にもとづいて教育指導を改善していく、Eテスト問題をコピーし、配布した教員の行為は著作権侵害に当たるので、処分の可能性はある、などであった。
 指導室長はテストが同じだということを知らなかったのは市教委側の「ミス」であったと認めたが、その回答は矛盾だらけである。問題を公開することが禁じられているなかでは、学校も教師も、また親や子どももテスト結果を問題に即して検討できない。これでは、このテストは市教委とベネッセによる「一方的調査」であって、「教育活動」だとはえない。学習意識調査もすべて回収されたために、それがどういうものであったかだれも知らない。こうしたなかでテスト結果が学校や子ども一人ひとりに通知されているのである。 
このようにみてくると、テスト問題が同じだったこと以上に、問題なことは問題用紙が子どもに返されていないことである。そればかりか、問題用紙を返さないことを前提とする学力テストが子どもの学習権にたいする侵害であることが行政当局にも教育関係者にもジャーナリズムにも理解されていないことである。ここに学力テストの正体がある。
 
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