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 CRC/C/GC/7
2005年11月1日
「乳幼児期における子どもの権利の実施」に関する
一般的注釈 第7号(2005年)完全翻訳(仮)

 
世取山洋介(DCI事務局長、新潟大学助教授)
 
I. はじめに
 
1. 本一般的注釈は、本委員会による締約国政府報告審査の経験に由来している。多くの場合、乳幼児期に関する情報はほとんど提供されず、コメントは主に子どもの死亡率、出生登録および健康ケアに限定されていた。本委員会は、子どもの権利条約の乳幼児にとってのより広範な意味に関する討議が必要であると感じた。これゆえ、本委員会は、2004年の一般的討議を「乳幼児期における子どもの権利の実施」との主題に当てた。この結果、勧告を採択し(CRC/C/143, sect. VII参照)、この重要な主題に関する一般的注釈を起草することを決定した。委員会は、本一般的注釈により、乳幼児が本条約に規定されたすべての権利の保持者であり、乳幼児期がこれらの権利の実現のために決定的に重要な時期であるとの認識を助長したい。本委員会は、「乳幼児期」の作業的定義を、出生、乳児期、就学前期間、および学校への移行期にあるすべての子どもとする(第4パラグラフ参照)。
 
 
 
II. 一般的注釈の目的
 
2. 本一般的注釈は以下を目的とする。
(a) すべての乳幼児の人権に関する理解を強化し、締約国の注意を乳幼児に対する自らの義務に向けさせること。
(b) 権利の実現に影響を与える乳幼児期の固有の特徴についてコメントすること。
(c) 乳幼児はその人生の始まりから、固有の関心、能力、および脆弱性を有する社会的主体(social actors)であるとの認識、ならびに、乳幼児がその権利を行使するに当たって助言、指導および援助を必要としているとの認識を助長すること。
(d) 乳幼児の状況、乳幼児の経験の質、および、乳幼児の発達を方向付ける影響の多様性を含む、本条約の実施において考慮される必要がある乳幼児期の多様性に対して注意を向けること。
(e) 子どもの権利を侵害する場合を除き尊重されるべき、地域の慣習および慣行を含む、子どもへの期待および子どもの取扱いの文化的な多様性を指摘すること。
(f) 乳幼児の権利を侵害し、かつ、その福祉の基礎を危うくする、貧困、差別、家族の崩壊、およびその他の多様な逆境に対する乳幼児の脆弱性を強調すること。
(g) 乳幼児期における権利に固有の焦点を当てた包括的政策、法律、プログラム、慣行、専門職研修、および研究の構築と促進により、すべての乳幼児の権利の実現に貢献すること。
 
III. 人権と乳幼児 
 
3. 乳幼児は子どもの権利の保持者である 子どもの権利条約は子どもを「18歳未満のすべての者をいう。ただし、子どもに適用される法律の下でより早く成年に達する場合は、この限りでない。」(本条約第1条)と定義する。これゆえ、乳幼児は、本条約に規定されたあらゆる権利の保持者である。乳幼児は、特別な保護のための措置を受ける資格を有し、かつ、その発達しつつある能力に応じて、その権利を漸進的に行使する資格を有している。本委員会は、締約国が、本条約におけるその義務の実施に当たって、乳幼児が権利の保持者であること、ならびに、乳幼児期という特別な期間における乳幼児の権利の実現に求められる法律、政策およびプログラムに十分な注意を払っていないことを懸念する。本委員会は、あらゆる人権の普遍性、不可分性、および相互依存性という原則を考慮し、子どもの権利条約が乳幼児期において包括的に適用されるべきことを再確認する。
4. 乳幼児の定義 乳幼児の定義は、地域における伝統および初等学校制度の組織に応じて、国や地域毎に多様である。4歳で就学前から学校への移行が始まる国もある。この移行が約7歳で始まる国もある。本委員会は、乳幼児期における権利を検討するに当たって、出生、乳児期、就学前期間、および、学校への移行期にあるすべての子ども対象としたい。本委員会は、従って、出生から8歳までの期間を乳幼児期に関する適当な作業的定義として提案する。締約国は、この定義に従って乳幼児に対するその義務を検証すべきである。
5. 乳幼児期のための積極的な課題設定 本委員会は、乳幼児期における権利のために積極的な課題設定を行なうことを締約国に奨励する。未成熟の人間を成熟した大人へと社会化する期間として乳幼児期をもっぱら見なす伝統的信念からの離脱が求められる。本条約は、非常に幼い子どもを含めて、子どもが自らの権利を持つ人間として尊重されることを求める。乳幼児は、家族、コミュニティ、および社会において、それ自身の関心、利益および意見を持つ能動的な構成員として認められるべきである。乳幼児は、自らの権利を行使するため、身体的いたわり、精神的ケア、および、精細な指導、ならびに、遊び、探検および学習のための時間と空間を、特に、必要としている。これら要求は、実施計画および独立した監視−例えば、子どもの権利オンブズマンの任命、および、法律と政策の子どもに与える影響の評価(一般的注釈第2号「独立した人権機関の役割」参照)−を含む、乳幼児期のための法律、政策およびプログラムの枠組みのもとにおいて最もよく考慮されうる。
6. 乳幼児期の特徴 乳幼児期は子どもの権利を実現するために決定的に重要な期間である。この期間は以下の特徴を有する。
(a) 乳幼児は、人生のこの時期において、その身体および神経系統の成熟、運動性、コミュニケーション能力および知的能力の向上、ならびに、その関心および能力の急速な変化という点において、最も急速な発達と変化を経験する。
(b) 乳幼児は親およびケア提供者(caregiver)に対して感情的愛着を形成し、その個性およびその発達しつつある能力を尊重する、いたわり、ケア、指導、および保護を、ケア提供者に、求め、要求する。
(c) 乳幼児は同年齢および異年齢の子どもとの重要な関係を確立する。乳幼児は、これらの関係を通して、共通の活動を取り決め、調整し、紛争を解決し、他人に対する責任を引き受けるようになる。
(d)  乳幼児は自分自身の活動、ならびに、他の子どもおよび大人との相互作用を通じて漸進的に学習することにより、自分が住んでいる世界の物的、社会的および文化的側面を能動的に理解する。
(e) 乳幼児期の初めの数年は、子どもの肉体的および精神的健康、感情的安定性、文化的および個人的アイデンティティ、ならびに発達しつつある能力のための基礎となる。
(f) 乳幼児が経験する成長および発達は、それぞれの個性、性別、生活条件、家族構成、ケア、および、教育制度に応じて多様である。
(g)  乳幼児が経験する成長および発達は、子どものニーズと適切な取り扱いに関する文化的信念、および、家族と地域社会における乳幼児の能動的な役割に関する文化的信念により強力に方向付けられる。
7. 個々の乳幼児が有する固有の関心、経験および挑戦を尊重することは、その人生の決定的に重要な段階において乳幼児の権利を実現するための出発点となる。
8. 乳幼児期に関する研究 本委員会は、乳幼児は、その生存、福祉、および発達が親密な関係に依存し、かつ、その上に築かれる社会的主体(social actors)として最もよく理解されることを、ますます多くの理論および研究が確認していることに留意する。これらの関係は通常、少数の鍵となる人々、多くの場合親、仲間、ならびに、ケア提供者および乳幼児期の専門家から構成される。同時に、乳幼児期の社会的および文化的側面に関する研究は、乳幼児に対する期待、および、乳幼児のケアと教育に関する措置の多様性を含む、乳幼児の理解のされ方、および取扱われ方の多様性に注意を向けている。ますます多くの乳幼児が、多文化的コミュニティの下、および、急速な社会的変化によって特徴付けられる文脈の下で成長し、乳幼児の権利がより大きく認められることにより、乳幼児に対する信念および期待もまた変化していることに、現代社会の特徴がある。締約国は、地域の状況、および変化しつつある慣行に適した方法で乳幼児期に関する信念および知識を用いること、および、伝統的な価値が、差別的でも(第2条)、子どもの健康および福祉に損害を与えるものでも(第24条3項)、子どもの最善の利益に反するものでもない場合には(第3条)、伝統的価値を尊重することが奨励される。最後に、栄養不良、疾病、貧困、遺棄、社会的排除、および他の一連の逆境が乳幼児にもたらす特別の危険が研究において強調されている。乳幼児期における適切な予防および介入戦略が、乳幼児の現在の福祉および将来の見込みに積極的な影響を与える可能性を有していることが研究によって明らかにされている。乳幼児期における子どもの権利を実施することは、従って、子ども期中期および青年期における個人的、社会的、および教育的困難を予防することに役立つ効果的な方法なのである(思春期の子どもの健康および発達に関する一般的注釈第4号(2003年)参照)。
 
IV. 乳幼児期における一般原則および権利
 
9. 本委員会は、本条約第2条、第3条、第6条および第12条を一般原則と定義している(一般的注釈第5号「本条約実施のための一般的措置」参照)。それぞれの原則は乳幼児期における権利と密接なかかわりを有している。
10. 生命、生存および発達に関する権利 第6条は子どもの生命に関する固有の権利および、子どもの生存と発達を、可能最大限までに確保する締約国の義務に言及する。締約国は、母親および新生児のための周産期ケアを改善し、乳児および幼児の死亡率を減少させ、かつ、人生のこの決定的に重要な段階にあるすべての乳幼児の福祉を促進する条件を創出するためのあらゆる可能な措置を取ることを要求される。栄養不良および予防可能な疾病は、乳幼児期における権利を実現するに当たっての主要な障害となり続けている。生存および身体的健康を確保することは優先事項である。しかし、締約国は、第6条が発達のあらゆる側面を含むこと、ならびに、乳幼児の健康および心理社会的な福祉は多くの側面において相互依存的であることに注意すべきである。乳幼児の健康および社会心理的な福祉は、劣悪な生活条件、遺棄、無神経かつ虐待的な取扱い、および、人間的な可能性を実現するための機会の制限によって危険にさらされうる。特に困難な状況において成長している乳幼児は、特別の配慮を必要とする(第Z部参照)。本委員会は、健康、適切な栄養、社会保障、適切な生活水準、健康的かつ安全な環境、および、教育と余暇(第24条、第27条、第28条、第29条および第31条)に関する権利、ならびに、親責任の尊重、および、援助と質の高いサービスの提供(第5条および第18条)を含む、本条約の他のあらゆる条項の実施により、生存と発達に関する権利が包括的な方法によってのみ実施されうることについて、締約国の注意を喚起する。幼いころから、子ども自身が、良い栄養および健康的かつ病気予防的な生活スタイルを促進する活動に参加させられるべきである。
11. 差別を受けない権利 第2条は、すべての子どもに、いかなる差別も受けない権利を確保している。本委員会は、この原則の乳幼児期における権利の実現との密接なかかわりを明らかにすることを締約国に要求する。
(a) 第2条は、乳幼児は、例えば、乳幼児を含むすべての子どもに、暴力から保護される平等な機会が法律によって提供されていないなど、いかなる理由に基づくものであれ、一般的に差別されてはならないことを意味している。乳幼児は、相対的に力がなく、かつ、自らの権利の実現を他者に依存しているために、差別の危険に特にさらされやすい。
(b) 第2条は、また、特定のグループの子どもが差別されてはならないことを意味している。差別は、栄養レベルの引き下げ、不適切なケアと注意、遊び、学習および教育に関する機会の制限、または、感情および意見の自由な表明の禁止という形を取りうる。差別は、搾取的または虐待的でありうる厳しい取扱い、および非合理的な期待によって表現されうる。例えば、
(i) 女の子に対する差別は、その生存およびその人生のあらゆる領域に影響を及ぼし、かつ、社会に能動的に貢献する能力を制限するので、権利の重大な侵害となる。女の子は、選択的中絶、性器割礼、ならびに、乳児期における不適切な摂食を含む遺棄および幼児殺害の犠牲者となりうる。女の子は、過度な家族責任を負うことを期待され、乳幼児期教育および初等教育に参加する機会を奪われうる。
(ii) 障害を持つ子どもに対する差別は、生存する見込みおよび生活の質を低下させる。障害を持つ子どもは、他の子どもに提供されるケア、栄養、いたわり、および、励ましを受ける資格を有している。障害を持つ子どもは、その統合およびその権利の実現を確保するための追加的な特別な援助を求めることもできる。
(iii) HIV/AIDSに感染し、またはそれを発病している子どもに対する差別は、このような子どもが強く必要とする支援および援助をそれから奪うものである。差別は、サービスの提供およびサービスへのアクセスに関する公的政策および、子どもの権利を侵害する日常的な慣行に見出しうる(第27パラグラフも参照)。
(iv) 民族的出自、階層・カースト、個人的状況および生活スタイル、または、(子どものまたはその親の)政治的および宗教的信条に関連する差別は、社会への十全な参加から子どもを排除する。このような差別は、子どもに対する自己の責任を果たす親の能力に影響を与える。このような差別は、子どもの機会および自尊心に影響を与え、子どもおよび親の間の敵意および紛争を助長する。
(v) 複合的な差別(例えば、民族的出自、社会的および文化的地位、性、ならびに/または障害)を被っている乳幼児は特に危険にさらされている。
12. 乳幼児は、また、例えば、子どもが婚外子として生まれ、もしくは、伝統的な価値から逸脱する状況のもとに生まれた場合、または、その親が難民もしくは亡命申請者である場合など、その親に対する差別の影響を被りうる。締約国は、いかなる形態であれ、いかなる場所−家庭、コミュニティ、学校またはその他の施設−におけるものであれ、差別を監視し、かつそれと闘う責任を有している。乳幼児のための高い質のサービスへのアクセスに関する潜在的な差別は、特に、健康、教育、福祉およびその他のサービスが普遍的に利用可能でなく、政府、私的組織、および慈善組織の組合せによって提供されている場合に、特別な関心事となる。本委員会は、第1段階として、子どもおよび親の背景および状況に関する主要な変数毎に分類された体系的なデータ収集を含む手段によって、乳幼児の生存と発達に貢献する質の高いサービスの利用可能性、およびそれへのアクセスを監視することを締約国に奨励する。第2段階として、利用可能なサービスから利益を受ける平等な機会をすべての子どもが有することを保証する行動が求められる。より一般的には、締約国は、乳幼児に対する差別一般、および、特に、その権利を侵害されやすいグループに対する差別についての意識を向上させるべきである。
13. 子どもの最善の利益 第3条は、子どもの最善の利益が子どもに関するあらゆる活動において第1次的に考慮されるとの原則を規定する。乳幼児は、その相対的な未熟性ゆえに、子どもの福祉に影響を与える決定および行動に関して、乳幼児の意見および発達しつつある能力を考慮に入れながら、乳幼児の権利および最善の利益を評価し、代理する責任を有する権限ある機関または者に依存する。最善の利益原則は、本条約において繰り返し指摘されている(乳幼児期に最も関連があるのは第9条、第18条、第20条および第21条)。子どもの最善の利益原則は、子どもに関するあらゆる行動に適用され、乳幼児の権利を保護し、かつ、その生存、発達、および福祉を促進するための積極的な措置、ならびに、子どもの権利の実現に日常的な責任を有する親およびその他の者を支援し、援助するための措置を必要とする。
(a)個々の子どもの最善の利益 親、専門家、および子どもに責任を有するその他の者による、子どものケア、健康、教育などに関するあらゆる決定は、最善の利益原則を考慮しなければならない。締約国は、子どもが、あらゆる法的手続において、子どもの利益のために行動し、子どもが自分の意見および選好を表明できるあらゆる場合にその意見が聴かれるように、子どものために行動する者によって独立して代理されるための施策を設けることを要求される。
(b) 子ども集団の最善の利益 子どもに影響を与える、あらゆる法律、政策、行政的および司法的決定、ならびに、サービスは、最善の利益原則を考慮しなければならない。これには、子どもに直接影響を与える行動(例えば、健康サービス、ケア制度、または学校に関すること)、および、乳幼児に間接的に影響を与える行動(例えば、環境、住居、または交通に関すること)が含まれる。
14. 乳幼児の意見と感情の尊重 第12条は、子どもは自己に影響を与えるあらゆる事柄について自己の見解を自由に表明し、かつ、意見を考慮される権利を持つと規定する。この権利は、自己の権利の促進、保護および監視への積極的な参加者としての乳幼児の地位を強化する。乳幼児の−家族、コミュニティおよび社会における参加者としての−主体性の尊重は、年齢および未成熟性を理由に不適当なものとして、しばしば見逃され、または、拒否されている。多くの国と地域において、伝統的信念は、乳幼児を訓練し、社会化する必要性を強調してきた。乳幼児は未発達であり、理解をし、コミュニケーションをし、選択をする基本的な能力さえをも欠いていると見なされてきた。本委員会は、第12条が、年少の子どもおよび年長の子どもの双方に適用されることを強調したい。権利の保持者として、例え生まれたばかりの子どもであっても、自己の見解を表明する資格を与えられ、その意見は「子どもの年齢と成熟に応じて適切に考慮される」(第12条1項)べきである。乳幼児は、その環境を敏感に感じ取ることができ、自分の生活における人々、場所および日常的な事柄を非常に迅速に理解し、自分自身の固有のアイデンティティを自覚する。乳幼児は、 話し言葉および書き言葉を通じてコミュニケーションができるようになるずっと以前から、選択をし、様々な方法で、自分の感情、考えおよび希望をコミュニケートしているのである。これに関連して、
(a) 本委員会は、権利の保持者としての子どもは、自分の意見を表明する自由および、自己に影響を与える事柄について相談を受ける権利を持つという概念が、子どもの能力、最善の利益および有害な経験から保護される権利に適した方法で、出生直後から実施されること確保するために、あらゆる適当な措置を取ることを締約国に奨励する。
(b) 意見および感情を表明する権利は、家族(適用可能な場合、拡大家族を含む)およびコミュニティにおける子どもの日常生活において、乳幼児の健康、ケア、教育のための施設および法的手続のすべての側面において、ならびに、調査と相談によるのも含めて政策およびサービスの開発において、係留されるべきである。
(c) 締約国は、関連するあらゆる状況における子どもの日常的な活動において、乳幼児が自己の権利を漸進的に行使する機会を創造することへの、親、専門家、および責任ある当局の積極的関与を促進するために、必要なスキルに関する研修の提供を含む、あらゆる適当な措置を取るべきである。参加に関する権利の実現は、大人に、子ども中心的な姿勢を取り、乳幼児に耳を傾け、かつ、子どもの尊厳および子ども独自の観点を尊重することを求める。それはまた、大人に、子どもの関心、子どもの理解力、および、好ましいコミュニケーションの方法を考慮しながら、忍耐をし、かつ、想像力を働かせることを求める。

V. 親責任および締約国による援助
15. 親およびその他のケア提供者の決定的に重要な役割 通常の状況では、乳幼児の親は、適当な場合には、法定保護者を含む、家族、拡大家族またはコミュニティの他のメンバーともに、乳幼児の権利の達成に当たって決定的に重要な役割を果たす。このことは、高い質の子どもケアサービスを含む援助を提供する締約国の義務と共に、本条約(特に、第5条)において十分に認められている。本条約の前文において家族は、「社会の基礎的集団、およびそのすべての構成員、特に子どもの成長および福祉のための自然環境」と言及されている。本委員会は、「家族」は、子どもの権利および最善の利益と合致する限り、核家族、拡大家族、ならびに、その他の伝統的および現代的なコミュニティに基礎を置く仕組みを含む、乳幼児のケア、いたわり、および成長を子どもに提供しうる多様な仕組みを意味するものと認める。
16. 親/第1次的ケア提供者および子どもの最善の利益 親およびその他の第1次 的ケア提供者に与えられる責任は、それらの者が子どもの最善の利益のために行動すべきとの要求に結びついている。第5条は、親の役割を、「本条約における子どもの権利の行使」にあたって適当な指導および助言を与えることと規定する。このことは、年長の子どもと同様に、年少の子どもにも当てはまる。新生児および乳幼児は他者に完全に依存しているが、ケア、指示および指導の受動的な受容者ではない。乳幼児は、自らの生存、成長、および福祉のために必要とする保護、いたわり、および理解を、親およびケア提供者から求める能動的な社会的主体(active social agent)なのである。新生児は出生直後から自分の親およびケア提供者を認識することができ、非言語的コミュニケーションを積極的に行なう。通常の状況では、親または第1次的ケア提供者との間に強い相互的愛着を形成する。これらの関係は、子どもに身体的および精神的安心、ならびに、一貫したケアおよび注意を提供する。子どもは、これらの関係を通して、自己のアイデンティティを形成し、文化的に価値のあるスキル、知識および行動を獲得する。このようにして、親(およびその他のケア提供者)は、それを通して乳幼児が自分の権利を実現することのできる主要な回路となる。
17. 積極的原則としての発達しつつある能力 第5条は、「発達しつつある能力」という概念を用いて、自らの権利および、権利が最もよく実現されうる方法の理解を含む、知識、能力および理解を子どもが漸進的に獲得する成熟と学習のプロセスに言及する。乳幼児の発達しつつある能力の尊重は、子どもの身体的、認識的、および感情的機能が、乳児期の初期から学校教育開始までに急速に発達するゆえに、乳幼児の権利の実現のために決定的に重要であり、特に乳幼児期において重大である。第5条は、子どもに与える援助および指導のレベルを継続的に調整する責任を親が持つとの原則を含んでいる。この調整は、子どもの関心および希望、ならびに、子どもが自律的な決定を行なう能力および自己の最善の利益を理解する能力を考慮する。一般的に、年少の子どもは、年長の子どもよりも、より多くの指導を必要とするが、同年齢の子どもの個々の能力の違い、および、個々の子どもの状況への応答の仕方を考慮することが重要である。発達しつつある能力は、子どもの自立性および自己表現を制限し、子どもの相対的な未成熟性および子どもの社会化される必要性を指摘することによって伝統的に正当化されてきた権威主義的な慣行のための口実ではなく、能動的および可能性を開く過程(enabling process)と見なされるべきである。親は(およびその他の者)、子ども中心的な方法により、対話と例示を通して、参加に関する権利(第12条)、および、思想、良心、信教の自由に関する権利(第14条)を含む、自らの権利を行使する乳幼児の能力を促進する方法により、「指導および助言」を提供することが奨励される1。
18. 親の役割の尊重 本条約第18条は、親または法定保護者は、子どもの最善の利益をその基本的な関心とし(第18条1項および第27条2項)、子どもの成長および福祉を促進する主要な責任を有していることを再確認する。締約国は、親、母親および父親の第1位性を尊重しなければならない。このことには、子どもの最善の利益でない限り、子どもを親から分離しない義務が含まれる(第9条)。乳幼児は、親および第1次的ケア提供者に身体的に依存し、かつ、それらの者に感情的愛着を有しているので、離別のもたらす悪影響に対して特に脆弱である。乳幼児は分離という状況を理解する能力が低い。乳幼児に否定的な影響を最も与えやすい状況には、遺棄、適切な子育ての剥奪、物質的または精神的な強いプレッシャーのもとにおける子育て、孤立した子育て、親の間の争いや子どもへの虐待などによる一貫性のない子育て、および、子どもが関係の断続(強制的な分離を含む)を経験し、または、質の低い施設ケアを提供されている状況が含まれる。本委員会は、親が子どもに対する第1次的責任を負えることを確保し、子どものケアにおける有害な剥奪、断続、および、ゆがみを減少させるなどにより、親がその責任を果たすことを援助し、かつ、乳幼児の福祉が危機にさらされている場合に行動をとるためのあらゆる必要な措置を取ることを、締約国に要求する。締約国の目標全般に、遺棄された、または孤児となった乳幼児の数を減少させること、ならびに、乳幼児の最善の利益であると判断される場合を除き(第Z部も参照)、施設ケアおよびその他の形態の長期ケアを必要とする子どもの数を減少させることが含まれるべきである。
19. 社会の流れおよび家族の役割 本条約は、父親および母親を平等なケア提供者であると認め、「親双方が子どもの養育および発達に対する共通の責任を有する」(第18条1項)ことを強調する。本委員会は、家族の規模、親の役割、および子どもの養育のための仕組みが多様性を増している全般的な流れのもとにおいて、現実には、多くの地域において家族の類型は変わりやすく、かつ、変化していること、 および、親を援助するネットワークの利用可能性もまた変わりやすく、かつ、変化していることに留意する。これらの流れは、少人数の一貫したケア的な関係のもとにおいてその身体的、人格的および心理的成長が最もよく提供される子どもにとって特に重大である。このような関係は、通常、母親、父親、兄弟、祖父母、および拡大家族の他のメンバー、ならびに、子どものケアおよび教育を専門とする専門的ケア提供者の組み合わせから構成される。本委員会は、これらの関係のそれぞれは、本条約における子どもの権利の実現に独自の貢献をなしうること、および、一連の家族の類型が子どもの福祉の促進と適合的であると認識している。国と地域によっては、家族、結婚および子育てに対する社会的姿勢の変化、例えば、家族の分離または家族の再形成が、乳幼児期における乳幼児の経験に影響を与えている。経済的プレッシャー、例えば、家族およびコミュニティから遠く離れて働くことを親が強いられることも、乳幼児に影響を与えている。国と地域によっては、親の片方または双方、もしくは他の親類が、HIV/AIDSに罹患し、そのために死亡したことが、乳幼児期の共通の特徴となっている。これらのこと、およびその他の要素が、子どもに対する責任を果たす親の能力に影響を与えている。より一般的には、急速に社会が変化する時代においては、伝統的な慣行は、現在の親の状況および生活スタイルにとって、もはや、実行可能でも適切でもない。しかし、新しい慣行が取り入れられ、新しい親の能力が理解され、評価され、蓄積するための十分な時間が経過しているわけではない。
20. 親に対する援助 締約国は、親、法定保護者および拡大家族が子どもの養育責任を果たすにあたって、子どもの発達に必要な生活条件を提供すること(第27条2項)、および、子どもが必要な保護とケアを受けることを確保することを含む、適当な援助を与えることが求められる。本委員会は、乳幼児に責任を持つ親およびその他の者に求められる資源、スキル、および人格的献身に十分な配慮が払われていないこと、特に、早婚および若年の親が依然として是認されている社会、および、若年の片親家庭が多い社会において、そうであることを懸念する。乳幼児期は、本条約に規定されている子どもの福祉のあらゆる側面−生存、健康、身体的安全、感情的安定、生活とケアの水準、遊びと学習の機会、および、表現の自由−に関連する親責任が、最も広範囲に及ぶ(そして、最も集中する)時期である。従って、子どもの権利の実現は、子どものケアに責任を有する者に利用可能な福祉および資源に大きく依存している。この相互依存性を認めることは親、法定保護者およびその他のケア提供者に対する援助およびサービスを計画する際の出発点を構成する。例えば、
(a) 統合的なアプローチは、子どもの最善の利益を促進する親の能力に間接的に影響を与える介入(例えば、税および手当、適切な住居、労働時間)および、より直接的な結果を有する介入(例えば、親および新生児に対する周産期健康ケア、親に対する教育、および家庭訪問)を含む。
(b) 適切な援助の提供は、親に求められる新しい役割とスキル、および、乳幼児期の間に要求とプレッシャーを移行させること−例えば、子どもがより運動的となり、言語的コミュニケーションが取れるようになり、社会的能力を身につけるに応じて、そして、ケアと教育プログラムに参加するのに応じて−を考慮すべきである。
(c) 親に対する援助は、父親、母親、兄弟、祖父母、および、子どもの最善の利益の促進に責任を時として有するその他の者に対する、子育てに関する教育、カウンセリング、およびその他の高い質のサービスを含む。
(d) 援助は、また、乳幼児との間の積極的かつ繊細な関係を奨励し、かつ、子どもの権利および最善の利益に関する理解を強化する方法による、親および家族のその他の構成員に対する援助の提供を含む。
21. 親に対する適当な援助は、健康、ケア、および教育の提供を含む乳幼児期に関する包括的な政策(第Y部参照)の一環として行なわれることにより、最もよく実現されうる。締約国は、乳幼児、特に、最も不利な状況に置かれ、その権利を侵害されやすいグループの子どもをこのようなプログラムに十全に参加させることを親に可能にするための適当な援助が親に提供されることを確保すべきである。特に、第18条3項は、多くの親が経済的に活動し、しばしば、低賃金の職につき、就労とその親責任とを両立させていることを認識する。第18条3項は、その親が働いている子どもが資格を有する、子どもケアサービス、母性保護、および施設から利益を受ける権利を有することを確保するために、あらゆる適当な手段を取ることを、締約国に求める。関連して、本委員会は、締約国が、国際労働機関第138号母性保護条約を批准すべきことを勧告する。

VI. 乳幼児期、特に、その権利を侵害されやすい子どものための包括的な政策およびプログラム
22. 権利を基礎に置く、領域横断的戦略 多くの国と地域において、乳幼児期は、質の高いサービスの開発において低い優先順位しか与えられてこなかった。サービスはしばしば断片的であった。サービスは、中央および地方レベルにおける政府の幾つかの部局の責任にしばしば委ねられている。その計画は、多くの場合、断片的で、調整されていない。サービスは、適切な資源、規制、質の保証もなく、私的部門および慈善部門によって主として提供されてきた。締約国は、子どもの最善の利益が常にサービスの計画および提供の出発点となることを確保するために、権利に基礎を置く、調整された、分野横断的な戦略を開発することを要求される。この戦略は、8歳までのすべての子どもに関連する法律および政策策定に対する、体系的かつ統合されたアプローチを基礎にすべきである。情報収集および監視システムによって裏打ちされた、乳幼児期サービス、施策、および施設のための包括的枠組みが求められる。包括的なサービスは、親に提供される援助と調整され、親の責任ならびに、親の状況および要求を十全に尊重する(本条約第5条および第18条。第X部参照)。親は、包括的なサービスの計画において意見を聴かれ、それに参加すべきである。
23. 年齢段階に適当なプログラムに関する基準および専門的研修 本委員会は、乳幼児期に関する包括的な戦略が、特に、年齢毎(例えば、新生児、乳児、就学前および小学校低学年)に変化する発達上の優先課題、ならびに、プログラムの基準および質に関する基準と発達上の優先課題との密接な関係を認めながら、個々の子どもの成熟性および個性をも考慮しなければならないことを強調する。締約国は、乳幼児に責任を持つ組織、サービスおよび施設が、特に、健康と安全の領域における質に関するスタンダードに従うこと、ならびに、職員が適当な心理学的資質を有し、適切であること、職員の数が十分であること、および、職員が十分な研修を受けていることを確保しなければならない。乳幼児の状況、年齢および個性に適したサービスの提供は、すべての職員がこの年齢の子どもと一緒に働くための研修を受けていることを必要とする。乳幼児に直に接する労働(work with young children)には、高い資格を有する男性および女性の労働力を引き付けるために、社会的に価値が与えられ、かつ、適切な給与が支払われるべきである。職員が、子どもの権利および発達についての、健全な、最新の、理論的および実践的な理解を有していること(第41パラグラフも参照)、職員が、適当な子ども中心的なケア実践、カリキュラム、および教育学を採用していること、ならびに、職員が、公的、私的プログラム、および、施設とサービスを監視するシステムを含む、専門的な資源および援助へアクセスできることが不可欠である。
24. サービスへのアクセス、特に、最もその権利を侵害されやすい子どものアクセス 本委員会は、乳幼児の福祉の促進のために固有に計画された健康、ケア、および教育に関するプログラムを含む、適当かつ効果的なサービスへの、すべての乳幼児(および、乳幼児の福祉に第1次的責任を有する者)のアクセスが保証されること確保するよう、締約国に要請する。最も脆弱な乳幼児のグループおよび差別を受ける危険にさらされている子ども(第2条)に、特別な注意が払われるべきである。このような子どもには、女の子、貧困の下で生活する子ども、障害を持つ子ども、先住民族または少数グループに属する子ども、移民家族の子ども、孤児となり、または他の理由で親によるケアを欠いている子ども、施設で生活する子ども、母親が刑務所にいる子ども、難民の子ども、亡命申請をしている子ども、HIV/AIDSに感染しまたはそれを発病している子ども、および、アルコール中毒または薬物中毒の親の子どもが含まれる(第Z部も参照)
25. 出生登録 乳幼児期のための包括的なサービスは出生時に始まる。本委員会は、出生時におけるすべての子どもの登録の実施が、多くの国と地域にとって、依然として、主要な挑戦であることに留意する。これは、子どもの人格的アイデンティティに否定的な影響を与えうるし、子どもは、基礎的健康、教育および社会保障を受ける資格を否定されうる。本委員会は、締約国が、すべての子どもに生存、発達、および高い質のサービスへのアクセスに関する権利(第6条)を確保するための第1段階として、すべての子どもが出生時に登録されることを確保するためのあらゆる必要な手段を取るべきことを勧告する。これは、すべての者にアクセス可能であり、かつ、無料の、普遍的で、よく管理された登録制度により達成されうる。効果的な制度は、例えば、適当な場合には移動式登録部隊など、家族の状況に柔軟に対応し、それに応答的でなければならない。本委員会は、病気の子どもまたは障害を持つ子どもが登録される可能性が低い地域があることに留意し、いかなる差別もなく、すべての子どもが出生時に登録されるべきことを強調する。本委員会は、また、出生後における登録を容易にすること、ならびに、登録されていない子どもが、健康ケア、保護、教育およびその他の社会サービスに平等にアクセスすることを確保することの重要について、締約国の注意を喚起する。
26. 生活水準および社会保障(第27条、第26条) 乳幼児は、その身体的、精神的、道徳的、および社会的発達にとって適切な生活水準を受ける資格を有している(第27条)。本委員会は、生活水準の剥奪がもたらす悪影響が広く認識されているにもかかわらず、最も基礎的な生活水準さえも多くの乳幼児に確保されていないことに留意し、それを懸念する。相対的貧困の下で成長することは、子どもの福祉、社会的包摂、および自尊心の基礎を危うくし、学習および成長の機会を減少させる。絶対的貧困の状況の下で成長することは、子どもの生存および健康を脅かし、かつ、生活の基礎的質の基礎を危うくするので、より深刻な影響をもたらす。締約国は、乳幼児期における貧困を減少させ、かつ、子どもの福祉への貧困の否定的な影響と闘うための体系的な戦略を実施することを要求される。子どもおよび家族に対する「物質的支援および援助プログラム」(第27条3項)を含むあらゆる可能な手段が用いられるべきである。社会保険を含む、社会保障から利益を受ける子どもの権利を実施することは、いかなる戦略においても重要な要素である(第26条)。
27. 健康ケア (第24条) 締約国は、乳幼児死亡率を減少させ、かつ、人生の健康的な始まりを子どもが享受できるようにするために、すべての子どもが、乳幼児期に、到達可能な最高水準の健康ケアおよび栄養にアクセスすることを確保すべきである(第24条)。特に、
(a) 締約国は、清潔な飲料水、適切な衛生、適当な予防接種、良い栄養、および医療サービスへのアクセスを確保する責任を有している。これらは、ストレスのない環境と同様に、乳幼児の健康に不可欠である。栄養不良および疾病は、子どもの身体的健康および成長に長期にわたる影響を及ぼす。それらは、学習および社会参加を妨げ、子どもの潜在的可能性を実現する見込みを低下させ、子どもの精神状態に影響を与える。同じことは、肥満および不健康な生活スタイルにも当てはまる。
(b) 締約国は、母乳育児の長所、栄養、衛生、および、公衆衛生を含む、子どもの健康および成長に関する教育を奨励することにより、子どもの健康に関する権利を実施する責任を有する2。健康的な家族・子ども間関係、特に子どもと母親(または第1次的ケア提供者)との間の健康的な関係を育成するために、母親および子どものための適当な出産前および出産後健康ケアの提供が優先されるべきである(第24条2項)。乳幼児自身も、例えば、適当な、子ども中心的健康教育プログラムに参加することにより、自らの健康を確保すること、および、兄弟のなかで健康的な生活スタイルを助長することに貢献できる。
(c) 本委員会は、乳幼児期におけるHIV/AIDSに対する特別な挑戦に、締約国の注意を向けたい。以下のためにあらゆる必要な手段が採られるべきである。(i) 親および乳幼児の感染を、特に、父親・母親間の感染経路、および、母親から新生児への感染経路を塞ぐことにより、予防すること(抗レトロウイルス療法を含む)、(ii)ウイルスに感染した親および乳幼児の双方に、正確な診断、効果的な治療、およびその他の援助を提供すること、(iii)健康でありながら感染している孤児を含む、HIV/AIDのために親または第1次的ケア提供者を失った子どもに適切な代替的ケアを確保すること(一般的注釈第3号「HIV/AIDSと子どもの権利」も参照)。
28. 乳幼児期教育 本条約は子どもの教育に関する権利を認め、初等教育は義務的で、すべての者に無償で利用可能であるべきとしている(第28条)。本委員会は、1年の就学前教育を、すべての子どもに利用可能かつ、無償のものとする計画を立てている締約国があることを認め、それを評価する。本委員会は、乳幼児期における子どもの権利が出生時に始まり、乳幼児の最大限の発達(第6条2項)と密接に結びついていると解釈する。教育と発達が結びついていることは、第29条1項において次のように説明されている。「1.締約国は、子どもの教育が次の目的で行われることに同意する。(a) 子どもの人格、才能ならびに精神的および身体的能力を最大限可能なまで発達させること。」教育の目的に関する一般的注釈第1号は、「子どものスキル、学習能力、その他の能力、人間としての尊厳、および自尊心と自信を発達させる」ことが目標であり、この目標が、子ども中心的で、子どもに役立つ方法で、子どもの権利と固有の尊厳を反映した方法により実現されるべきと説明する(第2パラ)。子どもの教育に関する権利はすべての子どもを含むこと、および、女の子が、いかなる種類の差別なく(第2条)、教育に参加することを可能にされるべきことについて、締約国の注意を喚起する。
29. 乳幼児期教育に対する親の責任および公的責任 親の責任の尊重を強調する本条約においては(第X部参照)、親(およびその他の第1次的ケア提供者)が子どもの第1番目の教育者であるということは、十分に確立し、かつ承認されている原則である。親は、乳幼児がその権利を行使するに当たり適当な指導と助言を与えること、および、尊敬と理解に基づく、愛情にあふれた安心のできる環境を提供することを期待される(第5条)。委員会は、以下の2つの点において、この原則を、乳幼児期教育の計画策定の出発点とすることを、締約国に要請する。
(a) 締約国は、親による養育責任の実行に適当な援助を与えるにあたって(18条2項)、子どもの早期教育に対する自らの役割に関する親の理解を強化し、子ども中心的な子どもの養育実践を助長し、子どもの尊厳に対する尊重を助長し、かつ、理解、自尊心、および自信を発達させる機会を提供するためにあらゆる適当な措置を取るべきである。
(b) 締約国は、乳幼児期に関する計画の策定にあたって、「子どもの人格、才能、ならびに精神的および身体的能力を最大限可能なまで」(第29条1項(a))発達させるにことについての親、専門家およびその他の者の間の積極的な協力を含む、親とのパートナーシップに可能な限り基づいて策定されたプログラムを提供することを、いかなる時も目的とすべきである。
30. 本委員会は、すべての子どもが、(第28パラグラフで概説されたような)その最も広い意味における教育を受けることを確保するよう、締約国に要請する。この教育は、親、より広範な家族、およびコミュニティが果たす鍵的な役割、ならびに、政府、コミュニティ、または市民社会の施設によって提供される乳幼児期教育に関する系統的なプログラムによる貢献を認めるものである。質の高い教育プログラムが、乳幼児の初等教育へ良好な移行、子どもの学習の進展、および長期にわたる社会適応に肯定的な影響を与える可能性が、研究によって示されている。多くの国と地域において、包括的な早期教育が4歳から開始され、早期教育が、その親が働いている子どものケアと統合されている国や地域もある。「ケア」サービスと「教育」サービスとの伝統的な区別が、常に、子どもの最善の利益とはならなかったとの認識に基づき、「エデュケア」(Educare)との概念が、統合されたサービスへの移行を示すものとして時々用いられ、乳幼児期に対する、調整された、包括的で、領域横断的なアプローチの必要性の承認を強化している。
31. 地域を基礎に置くプログラム 本委員会は、締約国が、家庭およびコミュニティにおける就学前プログラムを含む、親(およびその他のケア提供者)のエンパワメントおよび教育を主要な特徴とする、乳幼児期発達プログラムを援助すべきことを勧告する。締約国は、適切な資源を配分された高い質のサービスを提供すること、ならびに、特定のグループと個人の状況、および、乳児から学校への移行期までの特定の年齢グループの発達上の優先課題に応じた基準を確保するための法的枠組みを設定することに、鍵的な役割を果たす。締約国は、高い質の、発達にとって適当で、文化的に意味のある適切なプログラムを開発すること、および、プログラムの開発に当たり、乳幼児期のケアおよび教育に対して標準化されたアプローチを押し付けるのではなく、地域コミュニティと共同することが奨励される。本委員会は、また、締約国が、自信、コミュニケーション・スキルおよび、学習に対する情熱を、とりわけ計画作りへの能動的な関与によって、子どものなかに形成するために、初等教育への継続的、連続的な移行を確保する先導的試行を含む乳幼児期プログラムに対する権利に基づくアプローチにより大きな注意を払い、かつ、それを積極的に援助すべきことを勧告する。
32.サービス提供者としての私的セクター  本委員会は、2002年の一般的討議において採択された「サービス提供者としての私的セクターおよび子どもの権利の実施に関するその役割」する勧告(CRC/C/12, 第630‐653パラグラフ参照)に関連して、締約国が、プログラムの実施のための回路としての非政府セクターの活動を援助すべきことを勧告する。本委員会は、さらに、すべての非政府的サービス提供者(営利的および非営利的それ)に対して、本条約の原則および規定を尊重すべきことを要請し、これに関連して、本条約の実施が締約国の第1次的な義務であることについて、締約国の注意を喚起する。政府セクターおよび非政府セクターの双方における乳幼児期の専門家は、行き届いた養成、現職研修、および適切な報酬を与えられるべきである。これに関連して、締約国は乳幼児期における子どもの発達のためのサービス提供に責任を有している。市民社会の役割は、締約国の役割を代替するものではなく、それを補完するものである。非政府サービスが主要な役割を果たしている場合には、子どもの権利の保護および子どもの最善の利益の実現を確保するために、サービスの質を監視し、かつ規制する義務を締約国が有していることについて、締約国政府の注意を喚起する。
33. 乳幼児期における人権教育 本委員会は、また、締約国が、第29条および本委員会の一般的注釈第1号に照らして、乳幼児期教育に人権教育を含むべきことを勧告する。このような教育は、参加的、かつ、子どもをエンパワーするものであるべきである。すなわち、その興味、関心、およびその発達しつつある能力にふさわしい方法により、子どもにその権利および責任を行使させる現実の機会を子どもに提供すべきである。乳幼児に対する人権教育は、乳幼児が理解できる、家庭、子どもケア・センター、早期教育プログラム、および、コミュニティにおけるその他の状況における日常的な問題と深く関連付けられるべきである。
34. 余暇および遊びに関する権利 本委員会は、子どもの「休息し、かつ余暇を持つ権利、その年齢に適した遊びおよびレクリエーション的活動を行う権利、ならびに文化的生活および芸術に自由に参加する権利」を保障する本条約第31条の規定の実施に、締約国およびその他の者が不十分な注意しか払ってこなかったことに留意する。遊びは、乳幼児期における最も顕著な特徴である。子どもは、遊びを通じて、一人で遊んでいようとも、他の子どもと一緒に遊んでいようとも、自分の現在の能力を楽しみ、かつ、それに挑戦する。創造的な遊びおよび探検的な学習の価値は、乳幼児期教育において広く認められている。しかしながら、休息、余暇、および遊びに関する権利は、子ども中心的な、安心のできる、援助的な、刺激的かつストレスの無い環境において乳幼児らが会い、遊び、相互に関わり合う機会が不足しているためにしばしば妨げられている。子どもの遊びの権利のための空間は、多くの都会的環境において深刻な危機にさらされている。都会的環境においては、住居密度、商業中心地、および、交通システムが、騒音、公害、およびあらゆる種類の危険と結合して、乳幼児にとって有害な環境を生み出しているからである。子どもの遊びに関する権利は、家庭における過度な雑用または、競争的な学校によって台無しにされている。従って、本委員会は、締約国、非政府組織および民間組織に、貧困減少戦略の一部とすることも含め、最も幼い子どもによるこれらの権利の享受にとっての潜在的障害を特定し、除去するよう訴える。都市計画および、余暇と遊びのための施設は、適当な相談を通して、子どもの意見表明権(第12条)を考慮すべきである。締約国は、これらのすべてに関わって、休息、余暇および遊びに関する権利の実施に、より大きな注意を払い、かつ、それに適切な資源(人的および財政的)を配分することが奨励される。
35. 現代的なコミュニケーション技術と乳幼児期 第17条は、伝統的な印刷を基礎とするメディアおよび現代的情報技術を基礎とするマスメディアの双方が、子どもの権利の実現に積極的に貢献する可能性を認めている。乳幼児期は、出版社およびメディア製作者にとって専門的な市場である。出版社およびメディア製作者は、乳幼児の能力と関心に適した、乳幼児の福祉に社会的、教育的に有益で、子どもの状況、文化および原語の全国的および地域的多様性を反映した資料を普及することが奨励される。少数グループの承認および、その社会的包摂を促進するメディアに少数グループがアクセスする必要性に、特別な注意が払われるべきである。第17条(e)は、不適当で、潜在的に有害な資料からの子どもの保護を確保することに関する締約国の役割にも言及する。インターネットを基礎に置くメディアを含む現代的技術の多様性および、それへのアクセス可能性の急速な増加は、特に懸念の理由となる。乳幼児は、不適当で、わいせつな資料にさらされれば、特に危険にさらされる。締約国は、乳幼児を保護し、かつ、これに関連して親/ケア提供者がその養育責任を果たすことを援助する方法で、メディア製作および配信を規制することを要求される(第18条)。
 
VII. 特別保護を必要とする乳幼児
 
36. 乳幼児のリスクに対する脆弱さ 本委員会は、本一般的注釈を通して、子どもの権利を侵害する困難な状況のもとにおいて、多くの乳幼児が成長していることに、しばしば留意している。乳幼児は、親およびケア提供者との間の信頼できない、一貫性の無い関係、極端な貧困および剥奪のもとにおいて成長すること、紛争および暴力に取り囲まれること、難民として自らの家から追放されること、または、その福祉に不利益となるその他の多くの逆境によって引き起こされる害に対して脆弱である。乳幼児はこれらの逆境を理解する能力、ならびに、その健康、および、身体的、精神的、道徳的、社会的発達への有害な影響に抵抗する能力が低い。乳幼児は、親またはその他のケア提供者の病気または死亡によるのであれ、家族またはコミュニティの破壊によるのであれ、親またはその他のケア提供者が適切な保護を提供できない場合に、特に危険にさらされる。乳幼児は、いかなる困難な状況にあれ、それが経験している急速な発達上の変化ゆえに、特別の配慮を必要とする。乳幼児は、病気、トラウマ、および、発達のゆがみ、または乱れに対してより脆弱であり、困難を回避し、またはそれに抵抗することが相対的にできず、保護を提供し、乳幼児の最善の利益を促進する他者に依存している。本委員会は、以下のパラグラフにおいて、乳幼児期における権利に密接な関わりを持つ本条約において言及されている主要な困難な状況に、締約国の注意を向ける。締約国の目標は、一般的に、すべての子どもが、あらゆる状況において、その権利の実現のために適切な保護を受けることを確保することに向けられるべきである。
(a)虐待および遺棄 (第19条) 乳幼児は、頻繁に、遺棄、ならびに、身体的および精神的暴力を含む虐待の犠牲となる。虐待はしばしば家族の中でおき、特に破壊的となりうる。乳幼児は、回避または抵抗する能力、何が起きているのかを理解する能力、および、他者による保護を求める能力がより低い。遺棄および虐待の結果起こるトラウマが、最年少の子どもの脳の生育に与える測定可能な影響を含め、乳幼児の成長に否定的な影響を与えることを示す有力な証拠がある。締約国は、乳幼児期において虐待と遺棄が広がっていること、およびそれが長期にわたる影響を有していることに留意し、乳幼児が被った侵害を理由とする烙印を回避しながら、乳幼児の回復を援助する積極的な措置を取り、危機にさらされている乳幼児を保護し、かつ、虐待の犠牲者に保護を提供するためのあらゆる必要な措置を取るべきである。
(b)家族の無い子ども(第20条、第21条) 子どもの成長に関する権利は、子どもが孤児となり、遺棄され、もしくは家族によるケアを奪われた場合、または、(自然災害、その他の非常事態、HIV/AIDSのような伝染病、親の投獄、武力紛争、戦争および強制的移住による)長期にわたる関係の破壊もしくは離別を被っている場合に、深刻な危機にさらされる。これらの逆境の子どもへの影響は、子どもの個人的な回復力、年齢、置かれている状況、ならびに、援助および代替的ケアのためのより広範な資源の利用可能性に応じて異なる。低い質の施設ケアが、健康的な身体的および心理学的発達を促進する可能性が無いこと、および、特に3歳以下の子ども、そして、5歳以下の子どもに対しても、長期にわたる社会適応に深刻な否定的な影響をもたらしうることが研究によって示唆されている。代替的ケアが必要とされる場合、家族に基礎を置く、または、家族に類似したケアへの早期の託置が、乳幼児に肯定的な結果をもたらす可能性がより高い。締約国は、安心、継続的なケアと愛情、および、乳幼児が相互的な信頼と尊重に基づく長期にわたる愛着的関係を形成する機会を確保しうる代替的ケア、例えば、里親、養子縁組、および、拡大家族の構成員に対する援助に投資し、それを援助することを奨励される。養子縁組が想定されている場合には、本条約の他の箇所で規定され、かつ、本一般的注釈において想起されているすべての関係する子どもの権利および締約国の義務に体系的に留意し、それらを尊重しながら、子どもの最善の利益が、単に「第1次的に考慮される」だけでなく、「最高の考慮事項となるものとする」(第21条)。
(c)難民の子ども(第22条) 難民の乳幼児は、その日常的な環境および関係において当たり前のことの多くを失い、混乱している可能性が最も高い。乳幼児およびその親は、健康ケア、教育およびその他のサービスへの平等なアクセスを享受する資格を有している。その家族に伴われていない、または、その家族から分離された子どもは特に危険にさらされている。本委員会は、その出身国の外において家族に伴われていない子どもおよび家族から分離された子どもの取扱いに関する一般的注釈第6号において、これらの子どものケアおよび保護に関する詳細なガイダンスを提供している。
(d)障害を持つ子ども(第23条) 乳幼児期は、通常、障害が特定され、子どもの福祉および発達に対する影響が認識される時期である。乳幼児は障害だけを理由として、施設に収容されるべきではない。例えば、障害をもつ子どもの権利の実現を妨げる障壁の除去により、教育およびコミュニティの生活に十全に参加する平等な機会を、障害を持つ子どもに確保することが優先事項となる。障害を持つ乳幼児は、その親(またはケア提供者)に対する援助を含む、適当な専門的援助を受ける資格を有する。障害を持つ子どもは、尊厳を持って、その自立を助長する方法により、いかなる時も取り扱われるべきである(「障害をもつ子どもの権利」に関する1997年一般的討議に基づく本委員会の勧告(CRC/C/66)も参照)。
(e)有害労働(第32条) 国と地域によっては、子どもは年少から社会化され、潜在的に有害であり、搾取的であり、子どもの健康、教育および長期的な見込みに対して損害を与える活動を含む労働に従事している。乳幼児は、例えば、家庭労働もしくは農作業へ手引きされ、または、有害な労働に従事している親または兄弟を手伝いうる。新生児さえも、物乞いのために利用され、または、雇われる場合のように、経済的搾取によってその権利を侵害されうる。テレビ、映画、広告およびその他の現代的 メディアを含む娯楽産業における乳幼児の搾取は、懸念の原因となる。締約国は、児童労働の最悪の形態に関する第182号ILO条約(1999年)において定義されている極端に有害な形態の児童労働に関して、特別の責任を有している。
(f)薬物乱用(第33条) 年少の乳幼児が薬物乱用者となる可能性は稀にしかない。しかし、乳幼児は、アルコール中毒または薬物中毒の母から生まれた場合には、専門家による健康ケアを必要とし、家族の構成員が乱用者であり、薬物にさらされる危険にある場合には、保護を必要とする。乳幼児は、また、アルコールおよび薬物乱用のもたらす家族の生活水準およびケアの質への悪影響を被り、早期から薬物乱用への手引きを受ける。
(g)性的虐待および搾取(第34条) 乳幼児、特に女の子は、家族の中および外において、早期から性的虐待および搾取によってその権利を侵害されやすい。困難な状況にある子ども、例えば、家政婦として雇われている女の子は、特に危険にさらされている。乳幼児は、また、ポルノグラフィ製作者の犠牲となりうる。この問題は、子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィに関する子どもの権利条約選択議定書(2002年)において取り扱われている。
(h)子どもの売買、誘拐、および取引の禁止(第35条) 本委員会は、遺棄され、親と離別した子どもが様々な目的から売買され、取引されていることを示す証拠に、しばしば懸念を表明してきた。これらの目的には、最年少の年齢集団に関する限り、特に外国人による(もっとも、外国人だけによるのではないが)養子縁組が含まれうる。子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィに関する選択議定書に加えて、国際養子縁組に関する子どもの保護及び国際協力に関するハーグ条約(1993年)は、この領域における虐待を予防するための枠組みおよび仕組みを提供している。本委員会は、従って、養子縁組を認め、かつ/または、許容しているすべての締約国にこの条約の批准または加入を、一貫して、強く要求してきた。国際協力に加えて、普遍的な出生登録は、この権利侵害と闘うことに役立つ。
(i)逸脱行動および違法行為 (第40条) 乳幼児(8才以下の者と定義される。第4パラグラフ参照)は、いかなる状況においても、刑事責任最低年齢に関する法的定義に含まれるべきではない。非行をし、または法を犯した乳幼児は、人格のコントロール、社会的共感、および紛争解決のための能力を向上させることを目標とする、共感的な援助および理解を必要としている。締約国は、親/ケア提供者がその責任を果たすための適切な援助と研修を提供されること、ならびに、乳幼児が、質の高い乳幼児期教育とケア、および(適当な場合には)専門家によるガイダンス/セラピーへアクセスすることを確保すべきである。
37. 本委員会は、以上のそれぞれの状況おいて、および、その他のあらゆる形態の搾取(第36条)において、尊厳および自尊心を促進する環境において、身体的および心理的回復ならびに社会への統合を促進するための、あらゆる法律、政策および介入に、乳幼児の固有の状況を組入れることを締約国に要求する。
 
VIII. 乳幼児期のための能力の構築
 
38. 乳幼児期のための資源配分 締約国は、乳幼児の権利が、乳幼児の人生のこの決定的に重要な段階において十全に実現されることを確保するために(および、乳幼児期における経験の長期的な見込みに与える影響に留意し)、権利に基礎を置く枠組みの下において乳幼児期のための包括的、戦略的かつ、期限を定めた計画を採用することを要求される。これは、乳幼児期サービスおよびプログラムへの人的および財政的資源配分の増加を必要とする(第4条)。本委員会は、乳幼児期における子どもの権利を実施している締約国が、乳幼児期政策、サービスおよび専門的研修のための既存の社会基盤、ならびに、乳幼児期に配分することが潜在的に可能な資源のレベルに関して、出発点を大きく異にすることを認識している。本委員会は、また、締約国が、例えば、普遍的な健康サービスおよび初等教育が依然として達成されていない場合など、乳幼児期全体における権利の実現に関する優先事項の競合に直面しうることを認識する。にもかかわらず、本一般的注釈において明確にされている多くの理由から、乳幼児期に固有に配分されるサービス、社会基盤および資源全般に十分な公的投資がなされることが重要である。締約国は、これに関連して、乳幼児の権利を援助する包括的なサービスを財政的に担うために、政府、公的サービス、非政府組織、私的部門および家族の間に、強力、かつ、公正な協力的関係を発展させることを奨励される。本委員会は、最後に、サービスが脱集権化されている場合には、脱集権化が乳幼児に不利となるべきでないことを強調する。
39. データ収集および管理 本委員会は、乳幼児期のあらゆる側面に関する包括的、かつ最新の量的および質的データの、達成された進捗の説明、監視と評価、および、政策影響評価にとっての重要性を改めて表明する。本委員会は、本条約が対象とする多くの領域における乳幼児期に関する適切なデータ収集のための全国的システムを欠いている締約国が多いこと、および、乳幼児に関する分類された特定の情報がすぐに利用できないことを、特に認識している。本委員会は、すべての締約国に、本条約と一致し、かつ、性別、年齢、家族構成、都市・地方、およびその他の関連するカテゴリーに基づいて分類されたデータ収集システム、および指標を開発することを要求する。このシステムは、18歳までのすべての子どもを対象とし、乳幼児期、特に、その権利を侵害されやすいグループに属する子どもを重要視すべきである。
40. 乳幼児期に関する研究能力の構築 本委員会は、本一般的注釈において、子どもの健康、成長、認識的、社会的、文化的発達、その福祉に対する肯定的および否定的影響、ならびに、乳幼児ケアおよび教育プログラムの潜在的な影響に関して、広範な研究が行われていることに留意してきた。人権の観点に基づく乳幼児期に関する研究、とりわけ、研究過程への子どもの参加を含む、子どもの参加に関する権利が尊重されうる方法ついての研究もまた、ますます行なわれるようになっている。乳幼児に関する研究が示す理論と証拠は、政策と慣行の発展、先導的試行の監視と評価、および、乳幼児の福祉に責任を持つすべての者の教育と研修に提供すべき多くのことを有している。本委員会は、しかしながら、世界における限られた範囲の文脈と地域に焦点を当てているために、現在の研究には限界があることに注意を払う。本委員会は、締約国に、乳幼児期に関する計画の一部として、特に権利を基礎とする観点から、乳幼児期研究のための全国的および地方的能力を発展させることを奨励する。
41. 乳幼児期における権利に関する研修 乳幼児期に関する知見および専門的知識は静態的なものではなく、時間とともに変化する。乳幼児、その親およびその他のケア提供者の生活に影響を与える社会的な流れ、乳幼児のケアと教育に関する政策と優先事項の変化、子どものケア、カリキュラムと教育学における革新、および、新しい研究の登場など、その原因は多様である。乳幼児期における子どもの権利の実施は、子どもに責任を持つすべての者、および、乳幼児が家族、学校とコミュニティにおける自らの役割に関する理解を獲得するに応じて、子ども自身に課題を提示する。締約国は、子ども、親、および、特に、議員、判事、弁護士、警察官、公務員、子どもの拘留施設の職員、教師、健康職員、ソシアル・ワーカー、および地域のリーダーなど、子どものために、および子どもとともに働いているすべての専門家のために、子どもの権利に関する体系的な研修を実施することを奨励される。本委員会は、さらに、締約国に、公衆一般に対する意識向上キャンペーンを実施することを要求する。
42. 国際援助 本委員会は、資源的な制約が、本一般的注釈において概説されている包括的な施策を実施しようとする多くの締約国に影響を与えていることを認識し、世界銀行、その他の国連専門機関および二国間援助資金提供者を含む援助資金提供機関が、乳幼児期開発プログラムを財政的および技術的に援助すべきこと、ならびに、援助資金提供機関が、国際援助受入国における持続可能な発展を援助するに当たって、乳幼児期開発プログラムを主要な目標のひとつとすべきことを勧告する。効果的な国際協力は、政策開発、プログラム開発、研究および専門家研修に関連して、乳幼児期のための能力の構築を強化することもできる。
43. 展望 本委員会は、すべての締約国、国際組織、非政府組織、研究者、専門職集団、および草の根のコミュニティに、 子どもの権利に関する独立した機関の設立を提唱し続けること、ならびに、国際的、全国的、および地域的対話を含む、乳幼児期の質の決定的重要性に関する継続的な、高いレベルにおける政策に関する対話、および研究を育成することを要求する。
 
 
【注】
1(世取山洋介 仮訳)(2006年3月27日現在)
  参照:G. Lansdown, The Evolving capa-  city of the Child (Florence: UNICEF Innocenti Research Centre, 2005)
2 参照、世界保健機構、乳児および幼児の食事 のための世界戦略(2005年)



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