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川崎市「わくわくプラザ」に関する
DCI日本支部の見解
 
2004年11月10日
 
Defence for Children International 日本支部
代表 福田雅章(山梨学院大学法科大学院教授)
事務局長 世取山洋介(新潟大学教育人間科学学部助教授)
 
 
 
川崎市に対する提言
 
1 川崎市は、子どもと大人との人間的関係が確立されてはじめて、子どもの成長発達が保障されうるとの、国連子どもの権利条約第12条において確認されている国際的条理、および、学童保育で蓄積された経験と知識から得られる教訓の核心を十二分に理解すること。そして、この条理に基づいて「わくわくプラザ」を包括的に再構成するために必要なあらゆる適当な措置を取ること。特に、スタッフの勤務形態、人員数、研修体制および施設を抜本的に見直すこと。
 
2 川崎市は、「わくわくプラザ」導入にあたって自らが設定した「全児童対策」との理念に従い、人的および財政的手段の最もかからないニーズに合わせてサービスを低次元において一元化するのではなく、放課後におけるあらゆる子どものあらゆるニーズを充足するものへと、「わくわくプラザ」を抜本的に改革すること。このため、放課後の子どもの多様なニーズを把握し、現在の「わくわくプラザ」による各ニーズの充足の程度に関する綿密な実態調査を行ない、かつ、いずれのニーズにも対応可能な「わくわくプラザ」のあり方を、施設およびスタッフの両側面から抜本的に検討すること。あわせて、放課後における家庭に代わる“居場所”の確保というニーズを満たしている民間学童保育施設に対して、国へ補助金申請を行うなど、必要な援助を行なうこと。
 
3 川崎市は、国連子どもの権利委員会が日本政府第2回報告に対する最終所見において示した、子ども関連事業を第三者に行なわせる場合に政府の取るべき措置に関わる勧告に従い、財団法人かわさき市民活動センターと青丘社によって提供される「わくわくプラザ」における「サービスの利用可能性、およびその質と効率性を評価する」ためのモニタリングを継続的かつ綿密に行なうこと。その際、特に、以下のことを課題とすること。
 学童保育時代に子どもが享受していた大人との優れた人間関係が「わくわくプラザ」において喪失した原因、および、それを「わくわくプラザ」において実現するために必要とされる措置を明らかにすること。「わくわくプラザ」導入以降、継続して起きている事故と、子どもとスタッフ、および子ども同士の間における安定的な人間関係の欠如との関連を明らかにすること。多様なニーズを持った子どもたちが集ってもなお、そのような人間的関係を実現するために必要とされる人的および物的措置を明らかにすること。
 
4 川崎市は、以上のことを行なうに当たって、全国で始めて「子どもの権利条例」を制定した自治体にふさわしく、国連子どもの権利委員会による最終所見の名宛人となる意思のあることを表明し、かつ、勧告に従って「わくわくプラザ」の実態を、市民・NGOとの緊密な協力のもともに、検証すること。
 
T 本見解に至る経緯とその内容
 
(1)DCI日本支部は、川崎市が学童保育の全廃と、「わくわくプラザ」の導入を検討していた時期において、「『川崎市わくわくプラザ』に関するDCI日本支部の見解(最終案)」(2003年3月3日)(以下単に、最終案)を公表しました。最終案においてDCI日本支部は、川崎市に対して、学童保育全廃と「わくわくプラザ」の導入の計画を「即刻中止」すること、および、「放課後の子ども全員に対する施策」を、「学童保育で蓄積された経験と知識を核として、それを拡大することによってこそ優れたものになる、という観点から」作り直すことを求めました。
 この最終案を作成するに当たって、DCI日本支部が特に問題視したのは、国連子どもの権利条約がその第6条と第12条において確認している「相互的な人間関係を自分に直に接している大人との間で保障されながら、子どもが成長発達していくべき」との条理が、「わくわくプラザ」構想においてはまったく無視されていることでした。
 最終案では、「わくわくプラザの持っている本質的な欠陥」を「子どもの声に直接耳を傾け、子どもの成長発達に不可欠な人格的接触を持って子どもに対応してくれる大人がいないということです。」と指摘し、「子どもがだれからも声を聞いてもらえないまま一人ぼっちで放置されていれば、たとえ、安全な場所が提供されていたとしても、それは子どもの成長と発達にとっては意味がありません。さらに言えば、自分の声や要求を正面から受け止めてくれ、それにきちんと応答してくれる大人との関係を保障されなければ、例え、同年齢集団や異年齢集団がそこにあったとしても、その成長発達に必要な場所を保障されたことにはなりません。」と述べて、「わくわくプラザ」構想を批判しました。そして、「学童保育の歴史と実践によって確認されてきた知恵は、学童保育を子どもが行きたくなるような場所にするにあたって指導員が決定的な役割を果たすということです。そして、多くの困難を抱えている現代の子どもにとっては、指導員との緊密な人格的な関係が、ますます、重要になってきている」との認識のもとに、学童保育の経験と知識を核として、全児童対策事業を再考することを川崎市に求めたのです。
 しかし、2003年4月1日に川崎市は、学童保育を全廃し、「わくわくプラザ」を導入してしまいました。
(2)本見解は、「わくわくプラザ」実施以降における国際社会における新しい動き、および、川崎市民有志とともに行なった実態の検証を踏まえて、新たに作成したものです。
 本見解においては、全児童対策という名目のもと、学童保育が廃止され、「わくわくプラザ」が全面実施され状況が一変したこと、および、国連子どもの権利委員会が日本政府第2回報告審査に基づいて今年の1月30日に採択した最終所見において示した勧告を生かす必要があることを踏まえて、冒頭の提案を一新することにしました。
 さらに、本見解では、「わくわくプラザ」実施後に行なった実態調査によって明らかとなったことの説明に重きを置くことにしました。調査は、最終案において示した「わくわくプラザ」が持つ欠点に関する予測の正しさを裏付けるものとなりました。さらには、その予測を超えるより深刻な実態が生まれていることも判明しました。
 そして、国連子どもの権利委員会による最終所見を川崎市が誠実に受け止めて、そこに示された勧告に応答する場合に求められる措置を本見解で明らかにすることにしました。
 
U 「わくわくプラザ」の実態
 
(1)2003年3月段階での予測
 
 「わくわくプラザ」施行前の段階にあってDCI日本支部は、次のように、「わくわくプラザ」が持ちうる問題点を指摘しました。
@ わくわくプラザの貧困な物的条件のもとでは、子どもは自由に遊べないので、子どもたちが行きたい場所にはなりません。
A 帰宅時間およびおやつの申告制を取るので、帰宅時間を守らせることやおやつの配給にばかり気が取られ、子どもたちとの関わりは二の次にならざるをえません。
B 人的条件が貧しいので、わくわくプラザは子どもが行きたい場所にはなりません。
C わくわくプラザを利用するのは、行かざるをえない子ども=現在学童保育に通う子ども=です。現在学童保育に通う子どもの受けるサービスの質は大幅に後退します。
D 障害を持つ子どもも安心していられません。
 「わくわくプラザ」の実態は、以上の問題指摘の多くが正しかったことを示しています。
 
(2)どんな子どもにとっても「わくわくプラザ」は魅力的ではない
 
 「わくわくプラザ」への登録数と、実際の利用率、利用日数は、家庭に代わる居場所、親が家に居ない日に遊ぶための施設利用、PTAの会合への参加等のための一時的な預かりといった多様なニーズのうち、最後のものだけが満たされている蓋然性はあるものの、それ以外は満たされていないことを示しています。
 学校の懇談会のある日に、「わくわくプラザ」利用者が激増することは、実態調査でも確認されました。しかし、これをもってして、「わくわくプラザ」がこの子どもたちにとって魅力的な遊び場所であったと言うことは困難です。
 2003年度の利用実態に関して川崎市が公表したデータ「平成15年度わくわくプラザ事業実施状況関係資料」によれば、月平均では、登録児童数は35,366人、「定期的利用登録児童数」は7,788人、「非定期的利用登録児童数」は27,578人です。定期的利用と非定期的利用を合わせた「月間延べ利用児童数」は、実施当初の2003年4月には155,455人であったのが、1年後の2004年には100,549人へと減少しています(35%減)。
 非定期的に利用している児童(全27,578人)の延べ利用数(「定期的利用以外の利用数」)の総数は、2003年4月には63,313人であったのが、1年後には38,349人へと減少しています(39%減)。一人当たりの月平均利用日数(=「定期的利用以外の利用数」÷「非定期的利用登録児童数」)は1.8日、週平均利用日数は0.4日(いずれも年平均)となっています。月別に見ると、発足当初の2003年4月では月平均2.7日利用されていたのが、2004年3月には1.3日まで半減しています。
 特定の曜日に週1日以上「わくわくプラザ」を利用している「定期的利用数」について見ると、2003年4月には92,142人であったものが、1年後には、62,220人へと減少しています(32%減)。月利用日数(「定期的利用数」÷「定期的利用登録児童数」)は9.3日(年平均)となっています。これもまた2003年4月の11.8日から、1年後には8.2日へと減少しているのです(30%減)。
 
(3)学童保育機能の劇的な縮小
 
 「定期的利用登録児童数」には、かつては学童保育が対応していた、両親がフルタイムで働いているために家庭に代わる“居場所”を求めて「わくわくプラザ」を利用している子どもも含まれています。“居場所”としてのニーズを満たすために「わくわくプラザ」を利用している子ども、すなわち、かつての学童保育の機能を求めている子どもの数を推計してみました。
 推計に当たっては、両親がフルタイムで働いているために“居場所”を求めている子どもが、まず、週5日、月20日「わくわくプラザ」に通っていると仮定しました。そして、特定の曜日に「わくわくプラザ」を利用している子どもの週の平均利用日数を1日、2日、3日−月平均では、それぞれ、4日(推計@)、8日(推計A)、12日(推計B)−に分けて、3つの推計値を出してみました。次に、「わくわくプラザ」の利点として、お稽古事や塾通いができるようになったことが指摘されているので、“居場所”を求めている子どもが、週4日、月16日、「わくわくプラザ」に通っていると仮定してみました。そして、特定の曜日に「わくわくプラザ」を利用している子どもの週の平均利用日数を1日と2日−月平均では、それぞれ、4日(推計C)、8日(推計D)−に分けて、2つの推計値を出してみました。
 “居場所”として利用している子どもの数(月平均)は、計算上では、それぞれ、2,577人(推計@)、840人(推計A)、‐2,634人(推計B)、3,436人(推計C)、1,260(推計D)となります(別添、資料1「わくわくプラザの定期利用および非定期利用に関するデータ」)。推計Bは、マイナスの数字を導き出すので、事実ではありえません。推計Dも月別に見ると、マイナスの数字を導き出すので事実ではありません。
 では、推計@、推計Aと推計Cのいずれが、実態を反映しているのでしょうか。かつて学童保育に通っていた子ども(小学校1年〜3年)が約4,000人であったことを考えると、推計Aはあまりに数が少なすぎます。推計@または推計Cのいずれかが実態を反映しているのです。
 推計@を月毎に見てみると、スタート時の2003年4月には3,814人の子どもが“居場所”を求めて「わくわくプラザ」に通っていたことを示しています。また、推計Cを月毎に見ると、スタート時には、5,085人が“居場所”を求めていたことになります。推計@<学童保育に通っていた子どもの総数とあまり変わりない数の子どもが「わくわくプラザ」に通っていた>と、推計C<「わくわくプラザ」の利便さから“居場所”を求める子どもが約1,000人増えた>の間に真実が存在していると考えられるのです。
 いずれを真実と見るにせよ、月別利用実数の推移は重大なことを私たちに告げています。推計@は、1年を経過した2004年3月には、なんと1,984人に半減してしまったことを示しています。そして、推計Cも、1年後には、2,645人とこれまた半減してしまっていることを示しているのです。
 
(4)全体としての衰退と学童保育機能の劇的なやせ細りを検証する調査の必要性
 
 以上のデータは、どんな子どもにとっても、「わくわくプラザ」は魅力的なものとはなっていないという、実に重要な事実を、明示ないしは暗示しています。親が不定期に家を留守にする子どもがいつでも利用できるというのが「わくわくプラザ」の利点として指摘されていましたが、そのような子ども一人当たりの月平均利用日数は2日にも達していません。特定の曜日に子どもが通う定期利用にしても、週当たりの利用日数の平均は2日にもならず、1日である可能性が十分にあります。しかも、“居場所”を求めざるを得ない子どもの利用数が約半分に激減している蓋然性が極めて高いのです。
 もっとも、不定期利用が月1日から2日あり、特定の曜日の利用日数が週1日であっても、便利に利用されていることには変わりはない、という反論もあるでしょう。しかし、「わくわくプラザ」が提供している便利なベビーシッターとしての機能が、“居場所”を求めて「わくわくプラザ」に通う子どもの数が年間を通して半減するという事態の上に成り立っていることを直視すべきです。これはあまりに大きな犠牲です。
 ともあれ、現在「わくわくプラザ」で進行中なのは、放課後事業としての全体的な衰退、なかでも、学童保育機能の劇的なやせ細りであると、言っても過言ではありません。
 今後、より詳しい実態調査を行なえば、放課後における子どものいかなるニーズであれ、それを充足するのに「わくわくプラザ」は失敗しているという結論が出てくる可能性は相当に高いと考えられます。そのような調査を行なう責任‐少なくとも、定期的利用登録児童の利用登録日数別および現実に利用した日数別のデータの収集と公表‐は、川崎市にあることをここで確認したいと思います。
 
(5)「わくわくプラザ」において人間的関係を成立させるのは至難の業
 
 「わくわくプラザ」の実態は、学童保育において当たり前のように展開されていた指導員と子どもとの間の人間的な関係を確立することは著しく難しいことを示しています。それは、以下のことに由来しています。
第1. サービスが公営プールと同様な遊び施設の提供とそこにおける安全管理に一元化されていること。
第2. スタッフの仕事の比重が子どもの入室および退室管理に圧倒的に置かれていること。
第3. スタッフリーダーが1人から2人に増員されたとはいえ、週3日間「わくわくプラザ」における勤務、週2日は子ども文化センターで勤務という変則的な勤務形態を取っているため子どもとの継続的な関係を作りにくいこと。
第4. 2人のスタッフリーダーと数人の日替わりアルバイトに対して利用する子どもの数が圧倒的に多いケースが多いこと。
 「わくわくプラザ」に通う子どもが、スタッフとの間で人間的な関係を享受できる場合は、あっても、それは、当該学校における利用者が少数で、家庭に代わる居場所を求めている子どもたちがもっぱら利用しているという偶発的な事情がある場合に限定されています。
 最後に、障害を持つ子どものニーズが「わくわくプラザ」では満たされにくいことは、既に、川崎市によって認識され、障害を持つ子どもがいる場合にはスタッフを増員することになっています。
 
(6)人間的関係が欠落しながら多数の子どもが集まる場所における安全確保の困難さ
 
 子どもと大人、そして子ども同士の人間的な関係の欠落は、私たちの予想を超える事態を生んでいました。それは、子ども同士および子どもとスタッフとの人間的関係が欠落したまま、狭いスペースで多くの子どもたちが時間を過ごさなければならないことから、事故が発生しやすいということです。
 「わくわくプラザ」施行半年後には、いじめに起因すると推測されている転落事故(頭骸骨骨折)が発生しました。また、川崎市の公表している事故に関する資料を見ても、プラザ室における頭部および顔面の怪我を伴う事故が多く、それが継続して発生していることがわかります(2003年度では月2〜3件。2004年度では、月1〜2件)。また、プラザ室における事故においては、手の指の骨折が多いのも特徴となっています。
 川崎市の調査は、発生した場所および怪我の内容に限定されているために、怪我がいじめないしは喧嘩から生まれたものであるのか否かがはっきりしません。しかし、指導員と子ども、および子ども同士の人間関係がしっかりとしている学童保育においては、経験することが極めて少なかった、部屋における頭部・顔面を中心とする事故が、施行後2年経ってもまだ継続的に発生している事実は、現在の「わくわくプラザ」が、子どもたちの間のいじめ的関係を放置または強化し、あるいは、喧嘩を発生させやすい構造的欠陥を持っているとの強い疑いを生じさせるものです。
 
(7)必要とされる措置について
 
 以上の事態すべての基礎には、学童保育において当たり前のように行なわれてきた、指導員と子どもとの間の人間的関係、および、子ども同士の人間的関係を成立させるための指導員による働きかけが存在せず、存在していたとしても、スタッフの勤務形態、雇用形態および人数、ならびに、施設の状態から、それが有効に機能しえない、という事実があると考えられます。
 川崎市は、この人間的関係を成立させるために必要な、人的および物的条件の整備に本格的に取り組む義務があります。少なくとも、スタッフリーダーを週5日間「わくわくプラザ」で勤務させること、および、スタッフリーダーを増員することが求められます。また、子どもの多様なニーズに対応できるようにするために、施設を改善し、居場所を提供する場所と、遊びを提供する場所を分離すると同時に、機能別に異なったスタッフを配置し、かつ、スタッフ間の連携により、異なったニーズを持つ子ども同士の関係を形成できるようにしなければなりません。児童館において、レイアウトとスタッフ間の関係を工夫することにより、多様なニーズに応えながら、子ども間の関係を形成している、他の市町村・区における先例に学ぶところが大であるはずです。
  
V 国連子どもの権利委員会の最終所見に基づいて、「わくわくプラザ」を市民・NGOの協力のもとに検証すべき
 
 DCI日本支部は、国連子どもの権利委員会に提出した代替的報告書である『豊かな社会日本における子ども期の剥奪』において、「わくわくプラザ」を、行政による子どもサービス事業のアウトソーシングとそれによるサービスの質の後退の典型例として報告しました。そして、2004年1月28日に国連子どもの権利委員会により第2回政府報告審査が行なわれ、1月30日には、第2回政府報告に対する国連子どもの権利委員会の最終所見が採択されました。
 「わくわくプラザ」は、保育園の民間委託と同様に、政府が自らサービスを提供するのではなく、サービスを政府以外の第3者に提供させるという手法の一つとなっています。このような手法は、世界的に見ても“はやり”となっています。しかし、この手法が、子どもに提供されるサービスの質の向上に直結しないことは国際的な常識となっています。国連子どもの権利委員会は、この問題にこれまで強い関心を払ってきました。今回の最終所見においても、アウトソーシングを多用している国の政府に対してなしてきたのと同様な、次のような勧告を示しました(17)。
 
本委員会は、…締約国が、公的部門、私的部門、およびNGO部門に対する財政支出のインパクトを評価すること、さらにコストとの関連で、異なる部門において提供される子どものためのサービスの利用可能性、およびその質と効率性を評価することを目的として、子どもに対する予算配分に関するデータを収集し、かつ、0歳から18歳までの子どものために公的部門、私的部門、NGO部門に支出された政府予算の金額と割合を明確にすることを勧告する。
 
 この勧告は、政府がお金だけを出して、第3者にサービスの提供を行なわせている場合には、そのような手法が予算全体の中でどの程度の割合を占めているのかを把握すること、そして、「子どものためのサービスの利用可能性、およびその質と効率性を評価する」ことを求めるものです。勧告は、日本においても進行し始めた「わくわくプラザ」を含む子ども関連事業のアウトソーシングに関する調査活動を政府に勧告したのです。
 これは実に重要な勧告です。
 「わくわくプラザ」実施以降、多くの問題点が明らかとなってきましたが、これは川崎市民による地道な監視活動の成果に他なりません。川崎市民は勧告を先取りする、国際的にもとても優れた活動をしてきたのだと言えるのです。
 勧告は、日本国政府に向けられたものであって、それには、川崎市役所は含まれていません。しかし、子どもの権利条約を「拠り所」にし、子どもの権利条約で規定されている権利を「前提」としている(「川崎市子どもの権利条例解説書「川崎市子どもの権利に関する条例―各条文の理解のために―」)子どもの権利条例を、日本で初めて制定した自治体である川崎市は、率先して、この勧告を実践していく立場にあるはずです。
 そして、最終所見では、「本委員会は、締約国が本条約および本委員会の最終所見の実施に当たって市民社会と計画的かつ体系的に(systematically)連携すること」(19)も勧告しているので、川崎市と川崎市民とが連携して「わくわくプラザ」の問題点を検証していくことが求められているのです。
 
W 今後の対応について
 
 最終案において提案した対応、すなわち、川崎市当局からの意見聴取と意見交換、および、川崎市子どもの権利条例の活用を、DCI日本支部、または、川崎市民有志が行なってきました。しかし、川崎市当局は、「わくわくプラザ」導入の姿勢を崩しませんでした。また、川崎市子どもの権利条例に基づいて設置された川崎市子どもの権利委員会はこの問題については応答できていません。
 そこで以下の対応を取りたいと思います。
@ 市政監視に当たって期間的役割を果たすことを期待されている市議会の議員に対して、本見解の説明を行い、対話を行なうこと。
A 国連子どもの権利条約および国連子どもの権利委員会の第2回最終所見に基づく「わくわくプラザ」の検証を、川崎市子どもの権利委員会に諮問するよう、川崎市長に求め、対話を行なうこと。
B 本見解に基づいて川崎市当局との対話を行なうこと。
 
おわりに
 
 最終案の公表から1年以上を経て、本見解の取り纏めに至りました。取り纏めが遅くなったことを、関係者、特に、川崎市民の方々にお詫びを申し上げます。
 また、本見解を取り纏めるに当たって協力していただいた、川崎市民の方々、川崎市役所関係者、川崎市議会関係者、「わくわくプラザ」のスタッフ、かつて学童保育の指導員でありながら現在「わくわくプラザ」でスタッフリーダーとして働いている方々、川崎市学童保育指導員を辞職し、その後自ら民間学童保育施設を立ち上げた元川崎市学童保育指導員の方にお礼を申し上げます。
 「わくわくプラザ」訪問直後に、元川崎市学童保育指導員が立ち上げた民間学童保育施設を訪れる機会を持ちました。そこで、「わくわくプラザ」と優れた学童保育との本質的な違いを改めて感得することができました。川崎市では学童保育は廃止されました。しかし、この学童保育での実践こそが、将来において必ずや立ち現われるであろう、すべての子どもの、放課後におけるあらゆるニーズに応答できる新しい放課後事業の核となると確信しています。
 
 
 
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