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勧告内容と矛盾する小泉改革
小笠原:日本の教育政策について問題があると指摘されている、と考えたらよいのでしょうか?
福田:第一回勧告は戦後五〇年間・1998年までのことで、非常に閉鎖的な五〇年体制から生じてくる問題に対する勧告でした。そのとき既に、競争主義的ななかで管理されてストレスがたまって不登校がおきて…ということまで全部出ていて、子どもが成長・発達ができない状況を指摘しました。今度の勧告でもそれは続いているのですが、その後の新しい状況をも踏まえたものになっています。
産業構造の変革に伴って日本が経済的に飛躍的に発展しました。その後、バブルがはじけてもなお継続的に発展していくためには、新しい産業構造・新しい社会をつくりなおさなければいけない。そのときの中心的な考え方が、いわゆるグローバリゼーションのなかでの新自由主義というものでした。九八年以降に起こった小泉改革による構造改革は、新自由主義的なもので、ダメなものは切り捨てていくということを含み、同時に財政支出も効率よく、国力を回復するために役立つところだけに全部お金を集め、社会福祉も切っていくものです。
新自由主義は自己決定、自己責任というかたちで、少数の「エリート」と大多数の「負け組」とに分かち、「負け組」は自己責任だと切りすてていきます。一方新自由主義の中で落ちこぼれてエリートになれなかった人は、無気力になったり、自分勝手にやっていけばいいやというすさんだ気持になってしまいますので、公共に忠誠をつくすことや、愛国心を学校で教えたり、それでも聞かなければ少年法を改正して厳罰をもって臨んでいこうという体制がつくられています。
今回の勧告は新自由主義、新国家主義的な考え方を否定し、そして財政効率を最優先するという施策を見直せ、ということです。そのうえにさらにプラスして、子どもの人間の尊厳をきちんと認め保障し、そして自己実現できる意見表明権を中心に全部見直しなさいという勧告を出しているのです。
人権や権利が尊重される社会でこそ
小笠原:学校現場では今、「心のノート」・「日の丸・君が代」の強制等、子ども達に対し「郷里を愛し、国を愛し」という愛国心を中心とした新国家主義的な教育が押し付けられようとしていると思うのですが、そのことと、今自衛隊をイラクに派遣し、憲法改正をしようというような動きを連動させてみたときに、子どもの思想的な教育という側面も考えることができるのではないでしょうか?
福田:今政府の側にとって一番大事なのは何かというと、自分の頭で考えないで、忠誠をつくし、国家に従う人間をつくっておくことだと、私は思います。そうしておけば、たとえば大切な経済同盟国のアメリカの要請により実際に戦地に日本人を送らなければいけないというときに、教育振興基本計画のなかにその内容をポンと盛り込めばいいということになります。教育内容の中に思想をどんどん盛りつけて行くことができるようになっているということです。そのためにも教育基本法「改正」が必要なのです。
小笠原:素直で従順でな子どもになるよう思想統制をしておく、ということですか。
福田:そうです。アメリカとの強固な同盟関係による経済発展に固執するかぎり、アメリカの要請で軍人をつくらなければいけません。どんなに理不尽でも非道徳でも。だから、イラクへの派遣は人道支援だとか国際協調という、美しい美辞麗句を並べようとも、これは完全にアメリカの軍事同盟の確認をもらうための行為です。
小笠原:最後になりましたが、子どもをとりまく社会全体に、人権保障や平和を守る思想がなければ、子どもの権利を守ることはむずかしいですね。
福田:子どもたちの意見表明権に対応しなければならない保障者的関係にある人、たとえば親、先生、あるいは保育士、少年院の職員というような人たちの生活条件ないしは労働条件が今、新自由主義政策が実施されるなかでどんどん切り下げられています。それに対する勧告が一言どうしてもほしいので、この次のレポートではこの点の現状を書き込んだものを提出したいと思っています。そして、勧告の中で、子どもを取り巻くおとなの生活条件・労働条件について一言含まれているものが出るようにがんばりたいと思います。
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