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本質に近づく子どもの権利
小笠原:子どもの意見表明権に対する大人の対応として、誠実な応答義務ということがきわめて重要であるということを、今一度ここで確認しなければいけないと思います。第一回勧告は、高度に競争的な教育制度が子どもたちの成長・発達を歪めているというような概括的な視点からなされていたと思うのですが、今回の勧告は大変具体的ですが、その違いというのはどのように考えたらいいのでしょうか?
福田:二つあると思います。一つは、日本が子どもの権利条約を批准・発効してから十年も経ちましたので、子どもの権利のスローガン的、抽象的・概括的なものではなくて、より具体的に解決可能なものを選んで勧告しています。
それから二つめは、審査前日に発言した「届ける会」の子どもたちが、具体的な要求をもっていったこともあり、その具体的な要求に応えてくれたのです。たとえば、生徒会の活動をしていた子どもが、「結局は生徒会だとか自治会だといっても、先生が議案を全部用意して、何もかも決まっている。自分たちがものを言うと、そんなのは不可能だよと拒否されてしまう。何のための生徒会、自治会なのかわからない」というプレゼンテーションをしたことが下敷きになって、今回の意見表明権についての勧告になっています。
小笠原:そうすると、第一回勧告の結果・成果をふまえながら、第二回勧告では、特に個別的・具体的な見解を出したと考えていいのですか?
福田:大筋でそれで良いと思います。ただ、意見表明権については、第一回のものとは質が違っていると思います。子どもの権利の本質にだんだん近づいてきたと言えると思います。自己決定をするとか社会参加をするという形式的な外形だけでは、子どもの権利が本当に守れない、成長・発達は守れないということを、子どもたちのプレゼンテーションと私たちの詳細な予備審査での主張を通じて、委員の人たちが理解し・考えはじめたわけです。それは、次のクラップマン委員が語った言葉をみても明らかです。
「予備審査の時に日本のNGO代表団が述べた"子どもの権利の本質"について委員会はようやく考えはじめたところだ。個人的な意見を言わせてもらえば、代表団が語ったように、子どもは人間関係のなかでしか成長・発達できない。だとすれば、"子どもの権利の本質"とは人間関係を保障することにあり、それは子どもの意見表明の尊重によって実現されると考えている」
子ども施策の見直しが求められている
小笠原:日本の教育政策や教育のありかたについて、いくつか細かく勧告されていると思います。
福田:まず、「新自由主義」の子ども施策を見直すこと。能力・競争・成果主義に基づいて子どもを選別・差異化してはならないこと。すなわち教育基本法改正のもくろみに象徴されるような一部の勝者のエリートを優遇し、多数の敗者を犠牲にするような子ども施策を改めるよう求めています。例えば、柔軟な教育の機会を提供している定時制高校の統廃合の再考を迫っています(50項e)。さらに、障害をもった子どもに対しては、インクルージョンを求めるサマランカ宣言(44項の本文参照)を柱に据え特別なニーズを満たすための人的・財的資源の増強を求めています(44項c)。
2つ目に、「新国家主義」の子ども施策を見直すこと。国家や公共への忠誠を求める権威主義的・刑罰的な子ども施策を改めるように勧告しています。一方的な愛国心や国家への忠誠を醸成する偏った教科書に対する審査制度の再構築を強く迫っています(49項のg)。同じ思想基盤からつくられている「心のノート」等にもこれはあてはまります。さらに、体罰の禁止(36項)、プライバシーの権利の保障(34項)を求めるとともに、この35年間政治活動を一切禁止してきた通達(69通達)等の見直しも勧告しています(29・30項)。また、校長権限の強化や中央集権的な教育を否定し、カリキュラムの見直しや学校での問題などについても親・子ども・NGOと協働して行なうよう勧告しています。
3つ目には、財政効率優先の子ども施策を見直すこと。近年、民営化という名で子ども福祉に対する公的責任の放棄が進むなか、勧告第17項は、財政支出が子どものためにどのように分配され、どれが子どもの福祉向上にどのように役に立っているかを徹底的に評価することを求めています。それによって、子どもの福祉よりも財政効率を優先させようとする動向に楔を打ち込んでいます。「どんな子どもも切り捨てるな」とする他の要請とも合致するものです。
4つ目は、意見表明権を中心に子ども施策を見直すこと。勧告の第28項は、家庭、学校、その他の施設において、子どもを意見表明権の行使主体として承認し、その意見を尊重すること(誠実に対応すること)を詳細かつ網羅的に勧告し、学校等における方針決定プロセスへの子どもの全面的参加をも個別的に求めています。
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