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人間関係の中でこそ生かされる意見表明権
小笠原:今度の勧告では、意見表明権という言葉を明示して、子どもが権利行使の主体になり得る自己完結的な権利であるということをまず明示したわけですけれども、今度の国連の審議のなかで意見表明権の内容あるいは意義について、日本の方から何か発言があったのでしょうか?
福田:私たちは統一報告書にも書いて提出しましたが、審査の前日、「届ける会」の八人の子どもたち全員が、「日本の大人たちは自分たちの言うことに耳をかそうとしてくれない」、「"ことば"を奪われ、いつでも大人に支配されている」。「『あなたのため』という言葉で、自分の欲求や主体性を認めてもらえず、人間としての価値まで否定されている現実がある」。そして「そのために、欲求をつぶされ、おとなとの関係に絶望し、自分で自分を傷つけたり、反社会的な行動を取らざるを得ないところに追い込まれ、豊かな人間性あふれる存在へと成長・発達できないでいる。」ということを、自分たちの言葉で委員の人たちに、直接、きわめて説得的にプレゼンテーションしたのです。
委員の人たちは発言した子どもたちの体験としてだけではなくて、それが日本全体の普遍的な現象なんだということを、あらためて衝撃的にとらえたのでしょうね。これらの発言を受けて、「日本における子どもの意見表明権の尊重」ということについて、これだけ詳細なものを出したのだろうと思います。
委員の何人か、とくにドイツのお医者さんであるクラップマンさん、それからタイのサイスリーさん、アルゼンチンのロベルト・リウスキーさん達は、当日の審議が終わってからのパーティで、「一番大切なのは、子どもが無視されないで、きちんと大人と関係をつくって、その関係性のなかで成長・発達するということ。これが子ども特有の、本質的な権利なのだ」ということを話しました。
この言葉は、子どもが成長・発達するためにはおとなとの人間関係が重要なのだと、その関係性をつくるものこそ、子どもの権利条約なのだと言っているだと思います。「権利を主張するからには義務が生じる」などと言う以前に、子どもがどんな欲求をぶつけてこようとも、おとな・保障者がそれに対してきちんと対応すること。これが意見を尊重することです。それを通して子どもは安心と自信をその保障者との間でもつことができ、アイデンティティや道徳心のもととなる心理的・精神的なエネルギーを生み出すことができるということです。
また、委員の人達が、子どもの成長・発達権の保障は、「人間関係を通してのみできるのだ」と、理解しているということは、勧告の28項にわざわざ「家庭」という言葉を入れてあることからも読みとれます。
おとなから見れば、たとえどんなにばかばかしい意見であっても、とうてい認められないような欲求を表明したとしても、おとなの価値観や都合で一方的に切り捨てたりしない、子どもの存在をありのままで認めた対話のキャッチボールの中で、子どもは、いつでも欲求なり意見をそのまま出せるのです。言い換えると子どもは親や保障者との間で、いつわることのない、そのままの自分を出しても、きちんと受けとめてもらえるという居場所があってはじめて、「自分らしさ」というものを出す力が生まれるということです。自分を受け入れてくれる居場所が基礎にあるからこそ、意見(欲求)を表明することができ、そのエネルギーが成長・発達のもとになるということです。
それは何も難しいことではありません。子どもが問いかけて来たことに対し、「じゃあどうしたらいい?」「お父さんは……こう考えるよ」、「先生は……こう考えるよ」というかたちで誠実に対応していけばよいのです。子どもは社会の中で自己実現をしていく主体になっていく。そういしたことを十分に体験することで「社会に役に立つ人間になろう」という気持ちが芽生え、社会参加もできる人間に成長していくのです。そのプロセスの中で、「最後に決めるのはあなただよ」といわれる場面で自己決定することもあるでしょう。しかし、こうしたやりとりもなく、社会的参加や自己決定だけを先行させるならば、それは子どもに背負えない「責任」を押しつけることとなり、逆に成長・発達権を阻害する要因となる惧れがあります。
私は子どもの権利の本質の一つに、人間の尊厳があると思います。一人の人格をもった主体として扱われるということ。理性や自己決定する能力がなく、たとえ責任が取れない存在であっても、一人の独立した人間として、その尊厳は認められなければならないのです。
子どもの尊厳が認められるためには、子どもが「ねぇねぇ」と声かけてきたときに、おとなの側から「なあに」と顔を向け、関係性をつくってあげなければなりません。そうやって存在を認められることで、はじめてその子どもの尊厳が認められることになると考えています。
そういう意味で、人間関係が重要なポイントになります。 |
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